理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 512
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理学療法基礎系
立脚後期の下肢制御メカニズム
協調制御モデルを用いて
*相澤 高治石井 慎一郎
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抄録
【はじめに】歩行立脚期において、下肢には大きく二つのイベントが存在する。ひとつは立脚初期の接地課題への適応、もうひとつは立脚後期での駆動力の発生と安定した荷重の受け渡し準備である。このことは鉛直方向床反力成分が2峰性となってあらわれる。このうち、立脚初期の接地課題は、熊本らが提唱する拮抗二関節筋を含む三対6筋を配した「協調制御モデル」により、下肢先端の剛性楕円により解決することが明らかとなっており、第39、40回の理学療法学術大会において筆者らは、この特性により鉛直方向床反力成分が最大となる時期に下肢軸と床反力線が一致することを報告した。今回の目的はこのモデルを用いて立脚後期における荷重受け渡し準備と駆動力の発生をどのように制御しているかを明らかにすることである。
【対象と方法】対象者は健常成人9名(男性2名、女性7名、平均年齢20.6歳)とした。被験者は自由歩行中の下肢関節角度と床反力ベクトルを三次元動作解析装置VICON612(VICON‐PEAK社製)ならびに床反力計(AMTI社製)を用いて計測した。計測回数は各被験者3歩とした。対象者には実験の目的を説明し、同意を得た上で計測を行った。本研究で特に着目したのは、立脚後期に床反力鉛直方向成分が最大となるターミナルスタンス時とし、この時期の床反力ベクトルと下肢軸との関係性を求めた。協調制御モデルでは下肢軸の系先端を股関節と仮定し、股関節と足関節を結んだ線上に系先端の剛性楕円の長軸が存在することから、下肢軸と床反力のなす角(CL角)の値と変動幅を求め、床反力ベクトルと下肢軸との関係性について検討した。
【結果】計測によって得られた3歩の平均と変動幅を以下に示す。CL角の極性は下肢軸を基準として床反力ベクトルが進行方向へ傾斜している時を(-)とした。CL角の平均値は‐11.18°、変動の幅は(SD±0.61)であった。
【考察】今回立脚後期でのCL角を考えてみると一歩ごとの路面環境や歩行速度、関節角度が異なるにもかかわらず、常に一定していることが明らかになった。協調制御モデルの最大の特徴は、系先端の剛性と出力方向を分離して制御できることである。系先端での剛性楕円について考えてみると股関節、足関節を結んだ線上に楕円の長軸が、短軸はそれに直行し、垂直軸に対する下肢軸の傾きが傾斜となる。下肢軸に対して一定傾斜で床反力線が作用することで、鉛直方向の剛性を保持しつつ、前後方向への剛性を高めることとなる。つまり立脚後期に必要な荷重の受け渡し準備と蹴り出し時の安定した駆動力の発生という同時課題を達成するために、下肢軸の剛性楕円に対して一定の傾斜で床反力線を出力していると推察される。今後は、動作筋電図と同期させることで剛性楕円の具体的な値を算出し、より詳細な検討を進めていきたい。

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© 2007 日本理学療法士協会
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