理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 521
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理学療法基礎系
加速度センサを用いた脳卒中片麻痺患者の歩行評価の検討
麻痺側下肢運動と規則性の評価について
*生野 公貴徳久 謙太郎梛野 浩司鶴田 佳世宇都 いづみ奥田 紗代子岡田 洋平竹田 陽子松田 充代小嶌 康介古手川 登高取 克彦庄本 康治
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抄録

【目的】脳卒中片麻痺患者は,下垂足,反張膝といった様々な異常歩行を呈する.臨床での歩行評価は主に歩行観察が行われるが,主観的であり再現性に乏しいとされている.近年,腰背部に装着した加速度センサを用いて臨床有用性のある歩行評価が報告されている.しかし,腰背部の加速度波形では下肢の異常運動パターンは反映されず,片麻痺患者の歩行評価には不十分である.今回,片麻痺患者歩行の下腿部加速度を測定し、加速度波形の運動学的解釈および下肢運動の規則性の評価を検討した.
【対象および方法】対象は、健常成人12名(男性8名,女性4名),当院入院中の歩行可能な脳卒中片麻痺患者11名(男性9名,女性2名,下肢Brunnstrom recovery stageII:1名,III:3名,IV:4名,V:5名,平地歩行自立4名,非自立7名)とした.測定には,圧電型加速度センサ(マイクロストーン社,感度±5G)を用い,サンプリング周波数は200Hzとしてコンピュータに取り込んだ.加速度の測定部位は麻痺側下肢外果から約3cm上方とした.測定は,直線16m歩行路の往復とし,歩行開始から終了の過渡期を除いた区間の加速度波形を解析に使用した.測定条件は、杖の使用や靴の種類,装具の有無は問わず,歩行速度は任意とした.測定区間から20.48秒の加速度波形を用いて自己相関分析を行い,加速度波形の規則性を評価した.自己相関係数を健常者と片麻痺患者および片麻痺患者内での自立度と重症度ごとで比較した.解析にはMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした.また,加速度波形の運動学的解釈を行うため,矢状面上のビデオ撮影を行い,加速度波形と同期させた.
【結果】初期接地時,全対象者で衝撃加速度によるピークが見られ,ビデオ映像との同期も確認された.荷重応答期時,健常者では前後成分の増加が確認されたが,片麻痺患者では加速度変化が見られなかった.立脚終期時は健常者でピークが見られたが,片麻痺患者ではピークにばらつきが見られた.遊脚期では健常者は類似したパターンを示したが,脳卒中患者では,個人差が大きいものの,各個人の代償運動を反映した波形となった.自己相関分析を行った結果,片麻痺患者では健常者と比較して3軸方向すべての自己相関係数が有意に低値を示した(p<0.05).片麻痺患者内での自立度との比較では,統計学的有意差は認めなかったが,自立群ほど高い自己相関係数を示し,麻痺重症度の比較では,重症度が高いほど低い自己相関係数を示す傾向にあった.
【考察】下腿部加速度は麻痺側下肢の立脚期と遊脚期の運動パターンを捉えることが可能であり,臨床での歩行観察に定量性をもたらす一助となる可能性が考えられた.また,規則性の評価により,脳卒中患者では低い自己相関を示す傾向にあり、片麻痺患者の歩行能力を表す指標になると考えられた.

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© 2007 日本理学療法士協会
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