理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 522
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理学療法基礎系
10 m最大歩行速度と麻痺側下肢筋力との関連性について
*真栄城 省吾久田 友昭真喜屋 奈美湾野 あかね砂川 元首藤 哲也
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抄録

【目的】
脳卒中片麻痺患者の歩行能力に影響する要因は様々であるが、主要な因子として麻痺側下肢筋力が指摘されている。下肢筋力の低下は荷重時における支持性の低下につながり、歩行能力低下の大きな要因になると考えられる。歩行能力は臨床的に安定性、持久性、速度性、効率性など様々な側面から分析がなされているが、脳卒中片麻痺患者における歩行能力の簡便な評価法の一つとして10m最大歩行速度が用いられている。今回、麻痺側下肢筋力と歩行能力との関連について10m最大歩行速度を用いて検討を行った。
【方法】
当院入院中、または外来通院の脳卒中片麻痺患者31名(男性18名・女性13名、下肢Br.Stage4-13名・5-11名・6-7名、平均年齢59.6±13.4歳、平均羅患期間157.9±105.1日)とした。なお、測定に影響を与えるような重度の感覚障害や高次脳機能障害がなく、下肢に疼痛や整形外科的疾患を有するものは除外した。筋力はANIMA社製Hand-Held Dynamometer μtas F-1(以下、HHD)にて、麻痺側膝関節伸展筋力(以下、膝関節伸展筋力)・麻痺側膝関節屈曲筋力(以下、膝関節屈曲筋力)・麻痺側股関節屈曲筋力(以下、股関節屈曲筋力)を測定しピーク値を体重で除した値(kgf/kg)を求めた。測定は3回行い、平均体重比%を算出した。歩行能力は10m最大歩行速度とし、各筋力平均体重比%と比較した。統計処理はピアソンの相関係数を用いた(有位水準1%)。
【結果】
10m最大歩行速度と膝関節伸展筋力体重比%および膝関節屈曲筋力体重比%と股関節屈曲筋力体重比%における相関係数は、それぞれ0.74、0.79、0.48と有意な相関が認められた。(p<0.01)
【考察】
今回、脳卒中片麻痺患者の10m最大歩行速度と麻痺側下肢筋力との関連をみた。10m最大歩行速度と膝関節伸展筋力体重比%および膝関節屈曲筋力体重比%、股関節屈曲筋力体重比%に有意差が認められた。鈴木らによると最大歩行速度の決定要因として膝関節伸展筋力を挙げており、今回の研究においても同様の結果が得られた。また、我々の研究では膝関節屈曲筋力、股関節屈曲筋力での相関もみられたことから、麻痺側下肢筋力が歩行能力向上に関連する重要な因子の一つだと考えられる。脳卒中片麻痺患者の歩行能力向上を目指す上で筋力強化も選択肢の一つとして考え、時には強化していく必要性があると考える。
【まとめ】
1.今回、脳卒中片麻痺患者の歩行能力と麻痺側下肢筋力との関係を検討した。2.10m最大歩行速度と膝関節伸展筋力体重比%および膝関節屈曲筋力体重比%、股関節屈曲筋力体重比%に有意差が認められた。3.今後は、Br.Stage別での歩行能力と下肢筋力の関係、その他の因子なども含めて歩行能力との関連性を検討していきたい。

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© 2007 日本理学療法士協会
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