理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 526
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理学療法基礎系
回復期の脳卒中片麻痺患者への自転車エルゴメータ導入における歩行への効果
*田上 茂雄與儀 清介新里 剛史湯地 忠彦
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抄録

【目的】近年、自転車エルゴメータにおける脳卒中片麻痺患者の機能回復運動としての有用性が報告されている。先行研究において、新野等は慢性期の脳卒中片麻痺患者において自転車エルゴメータ施行後の歩行における効果を述べている。しかし、回復期の脳卒中片麻痺患者を対象とした検証は少ない。また、日常のトレーニングの場面において、脳卒中片麻痺患者の歩行における自主トレーニングに苦悩することが多い。そこで今回、回復期の脳卒中片麻痺患者1例に対し自主トレーニングの一環として自転車エルゴメータを継続して行った結果、多少の知見が得られたので報告する。

【対象】脳卒中片麻痺患者1例。年齢70歳。右片麻痺。B/S上肢IV 下肢IV。発症から約1ヶ月経過。歩行は、杖なしで軽介助から監視レベル。入院当初は片脚立位が不可能であった。

【方法】自転車エルゴメータは、CATEYE社製EC3500(座位タイプ)を用いた。時間は15分間で、正回転(7分30秒)と逆回転(7分30秒)を実施した。回転数は20bpmにて使用した。評価として、自転車エルゴメータ施行前後において、片脚立位時間とTimeUp&GoTest(以下、TGT)を計測した。以上の内容を10日間施行した。解析方法は、10日間の片脚立位時間とTGTの結果から、それぞれT検定にて比較検討した。

【結果】片脚立位時間は、左右ともに施行前に比べて施行後は有意に時間の延長を認めた。(P<0.05)TGTは、施行前に比べて施行後は有意に時間の短縮を認めた。(P<0.05)

【考察】片脚立位においては、自転車エルゴメータによって固有感覚受容器への刺激が増大し、それに伴って協調的な筋収縮と弛緩のタイミングを強化できた為と考える。また、バランスに必要な骨盤周囲筋群や体幹筋群の筋活動も増大できた為と考える。TGTにおいては、協調的な筋収縮と弛緩のタイミングを強化できたことで歩行速度や立位バランスなどに影響をもたらしたものと考える。また、自転車エルゴメータを座位で行うことで麻痺側下肢への視覚的フィードバックが得られやすいことも、体幹筋や下肢筋群の筋活動の増大につながったものと考える。

【まとめ】今回の結果から、回復期の脳卒中片麻痺患者における自転車エルゴメータの活用が有効的であることが示唆された。また、自主トレーニングの一環としても有効的であると考える。今後は、さらに症例を増やし検証していきたい。

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© 2007 日本理学療法士協会
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