理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 543
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理学療法基礎系
経験年数の異なる理学療法士による主観的な歩行評価結果の信頼性について
*滝澤 恵美岩井 浩一伊東 元
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キーワード: 主観的評価, 歩行, 信頼性
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抄録
【目的】
本研究の目的は、異なる経験年数の理学療法士が高齢者の歩行を主観的に評価した際の結果の一致性を調べ主観的評価の信頼性を検討することである。
【方法】
免許取得から2~17年(平均経験年数8.2±5.2年)の理学療法士9名が評価者となり、65歳以上の高齢者21名の10m歩行の様子を主観的に評価した。評価対象となる高齢者は体力測定への参加を希望した者であり、基本的な体力テストおよび記録紙上での10m自由歩行テストを実施した。その際、歩行の様子をDVカメラで前額面と矢状面から撮影した。理学療法士は、編集されたビデオデータを通常の再生スピードで観て、歩行に関連する6項目(「変動性」「推進力」「歩隔の広さ」「ふらつき・よろめき」「転倒リスク」「運動指導の必要性」)について主観的に5段階で評価した。5段階評価は、まず3を評価開始点として、質問項目に対しての主観的評価が良好の場合は4もしくは5に、不良の場合は2もしくは1に印をつけるように説明した。質問に対しての評価が良好でも不良でもなく判断しがたい場合は、3に印をつけてもらうようにした。評価項目毎に、理学療法士9名の評価者間信頼性は級内相関係数ICC(2.1)で検討した。
【結果】
理学療法士が、ビデオデータを観ながら21名の高齢者に対して6項目5段階の主観的な評価を行うのに要した時間は30分程度であった。ICC(2.1)の結果、「推進力(r=0.65)」、「転倒リスク(r=0.67)」、「運動指導の必要性(r=0.67)」、「ふらつき・よろめき(r=0.56)」の4項目は、信頼係数が0.6程度となった。一方、「変動性(r=0.41)」、「歩隔の広さ(r=0.35)」は信頼性係数が0.6以下と低く、評価者間のばらつきが大きい結果となった。
【考察およびまとめ】
宮崎ら(1983)は、脳卒中片麻痺患者を対象に床反力計から得られたデータと医療従事者による視覚評価の関係について調べ、視覚による評価は評価者によるばらつきを見せ、臨床経験変数の長さによる評価の結果に大きな差はなかったとしている。高齢者を評価の対象とした本研究では、臨床場面でセラピストが話題にしやすい「歩隔の広さ」において宮崎らと同様の結果が得られ、理学療法士間で評価が異なることが示唆されたが、「推進力」、「転倒リスク」、「運動指導の必要性」、「ふらつき・よろめき」については、理学療法士であれば主観であっても経験年数によらず一致された判断ができることが示唆された。
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© 2007 日本理学療法士協会
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