理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 557
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理学療法基礎系
地域在住高齢者におけるパフォーマンステストの信頼性
*松嶋 美正高橋 圭一篠原 祥子佐藤 文香
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抄録

【目的】
身体機能を把握するツールとしてパフォーマンステストが使用されるが,特に在宅生活を送っている高齢者においては,スコアを尺度としたスケールでは,その差が明確に現れない場合がある。したがって,本研究ではスコアと時間を尺度とするスケールを比較し,その妥当性を検討することと,身体機能に反映すると推測される心理状態を評価することで,包括的に身体機能を把握する可能性を明らかにすることを目的とする。

【方法】
対象は,本研究に同意の得られたデイケアサービスを利用している屋内歩行自立である高齢者65名(平均年齢79.4±6.2歳)である。方法は,パフォーマンステストとしてBerg Balance Scale(BBS)とTimed Up and Go Test (TUG)を用いた。心理状態の把握は,在宅ケアアセスメント表(MDS‐HC2.0)の「転倒の危険」の「不安定な歩行」,「転倒を恐れて外出制限」において調査し,両質問項目に該当するものを歩行不安ありとした。また,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を用い,20点以下を認知症とした。統計解析に関しては,年齢別,HDS-R,歩行不安の有無,要介護度別,BBSのカットオフ値で分類し,パフォーマンステストの測定結果において,各群内の相関はSpearmanの相関係数,群間の差においてはMann-WhitneyのU検定,一元配置分散分析を用いて検討した。

【結果】
年齢別は高齢者(79歳以下)30名,超高齢者(80歳以上)35名,HDS-Rは非認知症群37名,認知症群28名,歩行不安なし45名,歩行不安あり20名であった。要介護度別は,要支援:11名,要介護1:36名,要介護2,3:18名,BBSのカットオフ値に関しては,BBS45点以上は39名,BBS44点以下は26名であった。TUGとBBSの各群内の相関に関して,有意な負の相関(範囲r=-0.50~-0.87)が認められたのは,年齢別,HDS-R,歩行不安の有無,要介護度別であり,BBSのカットオフ値においてはBBS45点以上でr=-0.65であった。TUG,BBSで各群間に有意差が認められたのは,「歩行不安の有無」のBBS(p<0.01)と「BBSカットオフ値」のTUG,BBS(p<0.01)でともに認められた。

【考察】
BBSはTUGと有意な負の相関を示し歩行能力との関連性が認められたが,年齢などに関しては有意な差は認められず,屋内歩行自立の高齢者においては個人差が小さく,バランス能力の抽出が困難であると推測される。しかし,歩行に対する心理状態を考慮した場合,BBSはそれを把握することが明らかとなった。また,BBSのカットオフ値で群分けした場合,バランス能力が低下している高齢者に関しては,歩行手段によるものが大きいと推察され,歩行能力との関連性が低くなったと考えられる。

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© 2007 日本理学療法士協会
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