理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 558
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理学療法基礎系
地域在宅高齢者における前脛骨筋の力-時間特性について
歩行・バランス能力との関係に着目して
*鈴木 誠佐藤 洋一郎武田 涼子藤澤 宏幸植木 章三高戸 仁郎犬塚 剛本田 春彦河西 敏幸芳賀 博
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キーワード: 高齢者, 筋力, 歩行能力
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抄録

【目的】高齢者における前脛骨筋(以下、TA)の力-時間特性及び歩行・バランス能力との関係を調べることである。

【方法】対象は、M県在住の在宅高齢者46名(74.8±5.60歳)とした。測定項目は、1.足関節背屈筋力(最大筋力・最大トルク変化率)、2.歩行能力(歩行速度・歩幅・歩行率)、3.バランス能力(Functional Reach Test:FRT・片脚立位保持時間)であった。筋力の測定肢位は椅子座位とし、ロードセルを用いた足関節筋力測定器に非利き脚の足部を固定した。被験者は可能な限り速く等尺性収縮にて最大筋力を発揮するよう指示された。サンプリング周波数1KHzにてコンピュータに記録された。歩行テストは、5mの直線路で実施し、速度条件は「自由」及び「最大」の2種類とした。バランス能力の指標としてはFRTを用い、Duncanら(1990)の方法に従った(利き手にて測定)。また、片脚立位保持時間は開眼にて利き脚を挙上させた立位姿勢とし、足底が床面より離れた時点から再び接地するまでの時間とした。統計解析は、各測定項目間の関係を検討するため、ピアソンの積率相関係数及びスピアマンの順位相関係数を用いた。有意水準は危険率5%とした。

【結果】TAの最大筋力は21.55±5.51N・mであった。また、最大トルク変化率は97.66±40.37N・m・s-1であった。歩行能力は自由歩行条件で、速度1.18±0.20m・s-1,歩幅0.57±0.07m,歩行率125.87±11.34 steps・min-1であった。最大歩行条件では、速度1.54±0.25m・s-1,歩幅0.63±0.07m,歩行率145.79±16.46 steps・min-1であった。FRTは29.65±5.20cm,片脚立位保持時間は13.10±9.93秒であった。TAの力-時間特性と歩行能力との関係は、最大筋力及び最大トルク変化率と歩幅に有意な正の相関が認められた(最大筋力:自由 r=0.48・最大 r=0.35 p<0.05,最大トルク変化率:自由r=0.50・最大r=0.41 p<0.01)。しかし、バランス能力との間には有意な相関は認められなかった。

【考察】過去の報告では、TAの動特性と歩行能力の関係について検討されたものはなく、最大筋力よりも相関が高い事は興味深い。高齢者が歩行の際、歩幅が大きく確保できるという事は、歩行中の立脚期での安定性と大きく関係しており、TAの役割が重要であると考えられる。一方でバランスの指標との関係性が認められなかった要因として、システム理論に基づくならば、加齢による足関節機能の低下を股関節戦略にて代償している可能性を示唆するものであった。

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© 2007 日本理学療法士協会
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