抄録
【背景と目的】足把持力は、先行研究により歩行能力や立位保持能力、転倒などと高い関連性があることが確認されている。しかしながら、足把持力を定量的に評価することは、臨床において未だ一般的とはいえない状況である。これまでに我々は、ひずみゲージを用いた足把持力測定器を開発し、その測定データに再現性のあることを報告したが、測定器が気軽に持ち運べる大きさではないことなどの問題点が指摘された。そこで本研究では、測定方法を変更することによって小型軽量化した測定器を作成したので紹介する。
【作成した測定器】今回試作した足把持力測定器(重さ:2.1kg)は、長さ6cm幅10cm厚さ5mmのアルミ板にひずみゲージを取り付け圧センサーとし、幅10cm、長さ30cmの木製の基礎板の前方に埋め込んだ。測定データは、増幅装置を通してアナログ-デジタル(A-D)コンバータによりパーソナルコンピュータ(PC)へ入力する。測定と同時にPC画面上にkg単位で表示可能とし、サンプリング周波数は最高1kHzである。測定範囲は0~30kgであり、足把持力の最大値到達時間の測定も可能である。
【測定方法】測定肢位は端坐位で、足趾のMP関節より遠位部を測定器のセンサー上にのせ、足背部を固定用ベルトで固定する。測定は下肢や体幹の重量などによる圧センサーへの荷重をなくすため膝を伸展位とし、踵を床面に固定した。被験者には開始の合図後、足趾で圧センサーを最大努力で10秒間押してもらった。
【測定データ】被験者は下肢に病的機能的障害が認められなかった健常な成人男性22名(21.8±2.8歳)で、十分な休憩をとりながら利き足について2回計測した。測定値は1回目が平均15.3kg±3.0、2回目が平均15.2kg±2.3、平均誤差は1.1kg、誤差率7.0%であった。なお、検者内級内相関係数はr=0.95であった。
【考察】今回、足把持力の測定方法を変更することにより、小型化した足把持力測定器を作成し、健常成人を対象に測定データの再現性を検討した。その結果、測定データの高い再現性が確認された。今後は、既存の足把持力測定器から得られた測定データとの比較や各種立位動作能力との関連性から測定器の妥当性を検討する必要がある。また本測定器は、足趾に十分な可動域を有さない障害群においても、平面状のセンサーにより、足把持力が容易に測定できる可能性がある。今後は、より汎用性を持たせるためのセンサーの形状や、足趾の運動を阻害しない固定の方法といった測定器自体の改良とともに、適切な測定肢位や方法など検討し、障害群での検討を行う予定である。