抄録
【目的】我々は、第40回学術大会に於いて,立位体幹回旋時における両側脊柱起立筋の筋活動パターンを表面筋電位(sEMG)の2次元プロット解析した.左右の律動的な筋活動が得られれば十字状のプロットが得られ相関係数は低い値を示し,同時収縮が認められる場合には原点を中心とした傾きを持つ円または楕円状のプロットが得られ,相関係数は高い値を示すことを発表した.今回は,日常生活の中でよく行われるテーブル拭き動作を行わせ,このときの両側脊柱起立筋の筋活動パターン解析と左右分離性の検討を試みたので報告する.
【方法】研究の趣旨を説明し同意が得られた健常成人を対象者とした.被験者は男性2名(年齢19歳),女性7名(19~21歳)の9名であった.被験者全員が右利き手であった.測定肢位は膝関節軽度屈曲位,股関節屈曲25度,肩関節屈曲60度,手関節背屈45度の姿勢として,手掌の高さにテーブルを調整した.テーブルを拭く物として摩擦抵抗が低い乾燥タオルと摩擦抵抗が高い,1kg,2kg砂袋の3種類を用いた.被験者には,左右の上肢でそれぞれ半円を描く様に左右に拭く動作を1分間可及的高速で繰り返すように指示した.筋電位はL 1-2レベルの両側脊柱起立筋(ES),両側大腿直筋(RF)中央部より導出したsEMGは,筋電計からA/D変換ボードを介してパソコンに取り込み解析ソフトBIMUTASII(キッセイコムテック製)で解析した.解析対象サンプルは測定開始20秒後からの20秒間とした.
【結果】】sEMGから左右の脊柱起立筋筋活動を2次元プロット解析した.2次元プロットから得られた相関係数を算出し,タオル,1kg,2kg砂袋使用時の利き手・非利き手でそれぞれの平均値と標準偏差を求めた.利き手ではタオル使用時0.416,1kg砂袋では0.413,2kg砂袋では0.389となった.非利き手ではそれぞれ0.437,0.432,0.428となり利き手の2kg砂袋使用時の平均値が著明に低下した.RFの2次元プロット解析のからは,全ての被験者に於いて十字状のプロットが得られ,左右交互性の収縮パターンが見られた.
【考察】日常生活で行われる利き手によるテーブル拭きと,普段あまり行われない非利き手でのテーブル拭きにおけるESの筋活動の間にはタオルと1kgの間での利き手・非利き手のでは著明な差が見られなかった.2kg砂袋を使用したときに左右の平均値に差が見られ,利き手の方が低い値を示した.今回の結果に言及して言えば,利き手の方が重量の差に敏感に反応し,体幹筋の筋活動に何らかの変化が見られ左右の交互性の活動が高まったことが推察される. RFの筋活動パターンが交互性示したのは,体幹の最大回旋時における ESなどの体幹筋の不十分な回旋運動を補助していることが推察された.