理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 615
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理学療法基礎系
膝立ち位の特性
運動力学的視点より
*中村 香織木下 一雄山田 拓実安保 雅博宮野 佐年
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抄録
【はじめに】膝立ち位は臨床で多用されているが、その客観的データを示したものは少ない。我々は筋活動の側面より検討してきたが、姿勢保持方法には個人差が大きく運動力学的視点より分析する必要性を生じた。そこで本研究は膝立ち位の特性について、客観的指標を用いて明確にすることを目的とし、立位との比較を行った。
【方法】対象は下肢、体幹に障害等の既往のない健常者5名(男性2名、女性3名、平均年齢20.8±0.45歳)とした。本研究は当院倫理委員会に承認されており、測定に関しては本人の同意を得て行った。測定条件は立位と膝立ち位の2条件にて、被検者の安楽な肢位を20秒間1回ずつ保持させた。測定機器は、三次元動作解析装置(Oxford社製VICON370)、床反力計(Kistler社製)、マルチテレメータシステム(日本光電社製)を同期させ、解析ソフト(WAVE EYES)を使用しデータの解析を行った。マーカーは頭頂、両側の肩峰、上前腸骨棘、股関節(Hip)、膝関節(Knee)、外果、足尖、Th12、L3、S2、肩甲骨上に貼付した。三次元動作解析のデータをサンプリング周波数240HzでDIFF変換し、マーカー座標より骨盤傾斜角(両側ASISとS2からなる面の矢状面上での傾斜)、腰椎角(Th12、L3、S2のなす角)、体幹角(両側肩峰とHipそれぞれの中点を結ぶ線とHipの中点を通る垂直線のなす角)、床反力より足圧中心(COP、膝立ち位ではkneeから足尖までの圧中心)、重心(COG)、それらより体幹・股・膝関節モーメントを算出した。COGはCOG~床面/頭頂~床面×100(%)、COPは立位にて足尖~COP/足長×100(%)、膝立ち位にてKnee~COP/Knee~足尖×100(%)として正規化した。各測定条件でのアライメント(骨盤傾斜角、腰椎角、体幹角)、COG、関節モーメントを統計学的検定は対応のあるt検定を用いて比較した。
【結果】COGは立位57.9±0.8%、膝立ち位46.9±0.7%、股関節屈曲モーメントは立位20.1±7.5Nm、膝立ち位7.9±6.6Nmにて有意差を認めた。(p<0.01)また、COPは立位44.5±8.8%、膝立ち位5.6±2.3%であった。
【考察】膝立ち位では、空間座標でCOGが低く、COPは支持基底面前縁に近くなるので、安定性と不安定性の両方の要素をもちあわせた姿勢であるといえる。今回の結果より、膝立ち位の支持基底面は立位と異なる特徴をもち、重心の移動に伴って機能的に使用できる支持基底面の範囲は前方に偏位していることが示唆された。個々の姿勢特徴を見出すだけでなく、今後は客観的データをもとに姿勢保持パターンや優位に働く筋活動を分類し、臨床における視覚的判断の一助につなげていきたい。
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© 2007 日本理学療法士協会
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