理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 645
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理学療法基礎系
高齢者における30秒椅子立ち上がりテストの臨床応用
*近藤 慶承鶯 春夫七條 文雄
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抄録
【はじめに】
リハビリテーション分野では、治療効果を数値化し、具体的な結果を示すことが求められているため、様々な特殊機器を用い正確に数値化することができるようになってきている。しかし、臨床現場では、高価な機器を用いず、簡便に下肢筋力を測定できることが必要とされる。そこで、30秒椅子立ち上がりテスト(30-second chair stand test、以下CS-30と略す)がJonesらによって開発され、日本でも標準化されているが、臨床で使用した結果、本テストは疲労度が強く、下肢筋力を十分に反映できていない可能性が考えられた。今回、我々はCS-30の問題点を抽出し、より臨床現場に適した用い方を検討したので、若干の知見を加え報告する。

【方 法】
対象は、今回の研究について説明し同意の得られた健常成人83名(年齢は20~76歳)である。実施方法は、質問紙法によるアンケート調査9項目と測定評価4項目を同日に行った。測定項目は、1)握力、2)Hand-Held Dynamometerを用いた等尺性膝伸展筋力、3)CS-30、4)CS-30におけるBorg scaleである。また、CS-30を実施している様子をデジタル・ビデオにて記録し、1秒ごとの立ち上がり回数を計測した。

【結 果】
今回の測定結果を65歳未満群(74名)と65歳以上群(9名)の2群に分け、統計処理を行った。CS-30回数と下肢筋力の相関係数は、65歳未満群r=0.45、65歳以上群r=0.21と差が見られた。1秒ごとに相関係数をみてみると、最も高かったのは、65歳未満群r=0.50(6秒後)、65歳以上群r=0.37(7秒後)であった。CS-30開始後のBorg scaleでは、きついと感じた時間は、65歳未満群23.0±6.4秒、65歳以上群22.0±6.1秒であった。終了時にきついと自覚した者の割合は、65歳未満群58.1%、65歳以上群44.4%であった。

【考 察】
今回の結果より、CS-30と下肢筋力はある程度の相関を示すことが確認された。しかし、65歳以上群では経時的に相関が低くなるなどの問題がみられた。Borg scaleを使用した主観的運動強度からは約半数の者が、CS-30をきついと感じており、そのことが相関を低下させている可能性が考えられた。また、相関係数からみると両群ともに短時間の運動の方が高い相関を示していた。これらのことから、短時間でのテスト結果の方がより下肢筋力を反映する可能性が示唆された。今後の課題として、症例数を増やしデータの信頼度を向上させるとともに、7秒でのテスト結果と30秒でのテスト結果に差がある者の要因について検討していきたい。
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© 2007 日本理学療法士協会
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