理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 664
会議情報

理学療法基礎系
高齢者の歩行におけるDual-Taskと注意機能の関連性
*大角 哲也新谷 和文臼田 滋
著者情報
キーワード: Dual-Task, 注意機能, 高齢者
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】日常生活での歩行は会話をしながら歩くなど二重課題(Dual-Task)の場合が多く注意を歩行以外に分配させることが必要であるとされている.また注意機能の低下は転倒のリスクとなり歩行自立を妨げる要因となっている.これまでの研究でDual-Taskと注意機能の関連性を検討したものは散見される程度であり,本研究では高齢者の歩行おけるDual-Taskと注意機能の関連性を検討することを目的とした.

【方法】対象は研究に同意の得られた歩行が自立または監視下で可能な高齢者10名(男性5名,女性5名,年齢79.2±5.7歳,MMSE24.2±4.4)とし,疾患の内訳は脊椎・脊髄疾患術後5名,脳血管障害2名,廃用症候群2名,大腿骨頚部骨折1名であった.Dual-Taskは10mの直線路で計算課題を行いながらの歩行(Dual-Task歩行)を,これに対するControl課題として通常歩行を測定しそれぞれ歩行速度,重複歩距離および歩行速度変化率を算出した.計算課題はあらかじめ対象者に記憶してもらった「15」という数字から歩行中に検者が言う数字を減算する方法で行い,計算課題に対する回答数,正答数,誤答数を記録した.またTrail Making Test-B(TMT-B),Timed Up & Go Test(TUG),機能障害検査(股屈曲筋力,膝伸展筋力,足背屈筋力,下肢筋緊張,下肢触覚,下肢位置覚,足背屈可動域,疼痛,Optical Righting Reaction),FIMの「移動」を検査・測定した.統計処理にはWilcoxon符号付順位和検定とSpearman順位相関係数の検定を用い有意水準を5%未満とした.

【結果】1)歩行速度は通常歩行で0.64±0.48m/s,Dual-Task歩行で0.50±0.36m/sと有意差を認めた(p<0.01).重複歩距離は通常歩行で0.70±0.33m,Dual-Task歩行で0.61±0.29mと有意差を認めた(p<0.05).2)通常歩行とDual-Task歩行の歩行速度変化率(28.57±14.76%)はTMT-B(r=0.69,p<0.05),誤答数(r=0.79,p<0.01),1秒あたりの正答数(r=-0.67,p<0.05)とそれぞれ有意な相関関係を認めた.一方TUG,機能障害検査,FIMの「移動」とは有意な相関関係を認めなかった.

【考察】高齢者において計算課題を課すと注意が計算課題に分配された結果,歩行が稚拙になることが示された.またDual-Taskは注意の分配能力との関連性が高く,Dual-Taskが高齢者における動作中の注意機能を評価する指標になり得ることが示唆された.今後は対象を増やしての検討が必要であり,またDual-Taskによる注意障害への介入効果を検討し,Dual-Taskの注意障害に対する練習課題としての有用性を検討していきたい.

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top