理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 687
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理学療法基礎系
利き足に関する研究
大腿四頭筋筋力と足趾把持力およびその最大値到達時間の検討
*田中 真一村田 伸甲斐 義浩
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抄録

【目的】上肢における利き手の優位性は明らかであるが、利き足の優位性についての検討は不十分である。そこで今回、ボールを蹴る足(機能脚)と踏み切り足(支持脚)を利き足として、大腿四頭筋筋力と足趾把持力およびそれらの最大筋力に到達するまでの時間について検討した。

【方法】下肢に病的機能障害が認められなかったK医療系専門学校に在学中の男子学生15名(平均年齢22.4±5.7歳、平均身長170.2±5.4 cm、平均体重62.3±8.7 kg)の左右30肢を対象とした。なお、これら被験者には、研究の目的と方法を十分に説明し、同意を得た上で研究を開始した。まず、利き足の自己認識について「機能脚と支持脚はそれぞれ右か左」を回答してもらった。大腿四頭筋筋力とその最大値到達時間は、多用途筋機能評価運動装置BIODEX SYSTEM3(酒井医療株式会社)にて、端坐位、膝関節60°屈曲位の等尺性収縮で測定した。足趾把持力とその最大値到達時間は足把持力測定器にて、端坐位、膝関節90°屈曲した姿勢で測定した。統計処理には、対応のあるt検定を用い、有意水準は5%未満とした。

【結果】機能脚を右とした者13名、左は2名、支持脚を右とした者7名、左は8名であった。機能脚と非機能脚を比較すると、大腿四頭筋筋力(147.7±26.5 Nm, 137.3±24.5 Nm)およびその最大値到達時間(0.24±0.08秒, 0.23±0.06秒)に有意差は認められなかった。また、足趾把持力(17.3±4.9kg,17.4±5.1kg)およびその最大値到達時間(0.7±0.3秒,0.6±0.2秒)についても有意差は認められなかった。支持脚と非支持脚の比較では、大腿四頭筋筋力(142.2±24.6 Nm, 142.7±27.5 Nm)およびその最大値到達時間(0.22±0.06秒, 0.25±0.08秒)に有意差は認められず、足趾把持力(16.8±5.35kg,17.9±4.5kg)とその最大値到達時間(0.59±0.3秒,0.7±0.3秒)についても有意差は認められなかった。

【考察】今回、大腿四頭筋筋力と足趾把持力およびそれぞれの最大値到達時間について、利き足と非利き足に差があるか否かを検討した。その結果、すべての測定値に有意差は認められなかった。上肢の筋力については一側優位性が報告されているが、これは生活場面での利き手の使用頻度に依存していることが考えられる。下肢については、その主な機能が歩く、走るといった移動手段であり、どちらか一側のみを使用する機会は少ない。今回、研究対象とした大腿四頭筋機能と足趾機能において、上肢と下肢の日常場面での役割の違いが今回の結果につながったものと考えられる。これらの知見から、理学療法評価や治療を行う際、上肢については利き手の影響を考慮する必要があるが、下肢については利き足の影響を考慮する必要性が少ないことが示唆された。

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© 2007 日本理学療法士協会
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