理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 691
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理学療法基礎系
徒手筋力計を用いた座位体幹屈筋力測定の信頼性および筋活動特性の検討
*武井 圭一杉本 諭
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抄録

【はじめに】筋力の測定方法は、従来の徒手筋力検査(MMT)に加え、握力計や徒手筋力計(Hand Held Dynamometer:HHD)による定量的な測定が定着してきている。しかし、体幹筋についてはトルクマシン以外による定量的測定は実用化されていない。本研究の目的は、HHDを用いて座位における体幹屈筋力測定の信頼性の検討、および座位と背臥位での体幹屈筋力測定時の筋力および筋活動の関連を検討することである。
【方法】対象は、本研究に同意の得られた健常学生21名(男性12名、女性9名)とした。体幹屈筋力は座位と背臥位の2条件で測定し、座位での測定はバックレストの角度調節付の椅子を用いて骨盤後傾10°位とし、背臥位での測定はMMTによる体幹屈曲測定方法に基づいた肢位とした。測定にはμTas F-1(アニマ社製)を用いてセンサーと胸部の間に市販のスポンジで作成した5cm厚の弾性材を挟み、胸骨角直下の高さに設置した。センサーはそれぞれの肢位での等尺性最大収縮が測定できるように、ベルトを用いてバックレストおよびベッドと固定した。また、測定時の股関節屈曲を防ぐため検者は被検者の両側大腿部を上方から固定し、両上肢は胸部の前で組むように指示した。測定は、3秒間の最大努力での等尺性収縮力を十分な休憩を入れながら3回施行し、座位での測定は1週間後に再び施行した。筋活動の測定は、本対象者のうち男性10名に対し、筋電計(NORAXON社製、MYOSYSTEM1200)を用いて右側の腹直筋上部、下部および大腿直筋に対して筋力測定時の活動を測定した。データ処理は、安定した2秒間の実効値を求め3回の平均値を算出した。分析方法は、座位測定方法の信頼性について、連続測定および日の違いによる測定に対し級内相関係数(ICC)を用いて検討した。筋活動については、ピアソンの相関係数による分析と対応のあるt検定を用いて測定肢位別の筋活動の関連および変化を検討した。尚、解析ソフトにはSPSS for windows ver.14.0を用い、有意水準は5%とした。
【結果】座位測定の信頼性分析の結果、連続測定によるICC値は0.97、日の違いによる測定のICC値は0.92であり、いずれも有意な強い相関を認めた(p<0.01)。肢位別の各筋活動の相関分析の結果、腹直筋上部0.43、腹直筋下部0.92(p<0.01)、大腿直筋0.16であった。また、肢位別の筋力の相関は0.79(p<0.01)であった。対応のあるt検定の結果、腹直筋は有意差を認めず、大腿直筋は座位で有意に強い筋活動を認めた(p<0.05)。
【考察】連続測定および日の違いによる測定においてICCに有意な強い相関を認めたことから、今回の測定方法は信頼性の高いものであると考えられた。また、臨床で多く用いられているMMT体幹屈曲測定との比較から、座位体幹屈筋力測定の特性として股関節屈筋群の影響を伴った、主として腹直筋下部の評価に有効な方法であると考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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