理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 694
会議情報

理学療法基礎系
膝関節伸展運動時の大腿四頭筋における等尺性筋力と力発生率
*対馬 栄輝石田 水里
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】筋の反応時間(RT)に類する,力立ち上がり時間(TPF)または力発生率(RFD)は等尺性筋力と比して筋の質的な出力特性,すなわち動特性を表す有効な指標であると考える.現にRFDは等運動性筋力やパフォーマンスと関連する(対馬ら,1997,1998).しかし,これは単純な相関分析から得られた知見であるため,RTや身体機能等による疑似相関の危険性がある.そこで,膝伸展筋を対象にTPF・RFDと等尺性筋力を分けて考えることが妥当かを知るために,RT,身体形態,等運動性筋力などの影響を考慮した多変量的な解析によって検討した.
【方法】健常成人22名(男9名,女13名)を対象とした.平均年齢21.5±3.0歳,平均身長164.8±6.5cm,平均体重59.1±9.3kgであった.
跳躍時に踏みきる側の下肢を測定肢とし,大腿直筋,内・外側広筋部に表面電極を貼り付けた.最大等尺性膝伸展筋力(ISO)と等運動性筋力(角速度30°・90°・180°/秒で求心性・遠心性収縮の2種類)をChattecx社製KIN/COM 500Hにて測定した.RTは下腿に対する予告なしの外力(レバーアームが膝屈曲55゜から60゜に移動)を刺激として膝伸展運動を行わせ,ISOの測定と同時に行った.被検者には外力を感じると同時に出来る限り速く強く伸展してもらい,そのままISOを5秒間発揮させた.筋電波形とトルク,角度の信号をsampling rate 1kHzでパソコンに取り込み,波形処理ソフト上で,3筋のうち最も速く活動した筋から,RTの前運動時間と電気力学的遅延(EMD),ならびにTPFを計測した.そしてTPFでISOを除したRFDも求めた.
ISOとTPFを目的変数,等運動性筋力,RT,年齢,身体形態を説明変数とした正準相関分析(CCA)を行った.次に,目的変数をISOとRFDに変更して再度解析した.ほとんどの変数は正規分布したが,確認のためにカテゴリカルCCAも行って照合した.以上は,S言語によるプログラムを用いた.
【結果】目的変数をISOとTPFにしたときは,第1・2正準変量ともにTPFとISOの特性が大きく分かれ,ISOには等運動性筋力全般と体重の影響が強く,TPFにはEMD,身長,性別の影響が強く現れた.目的変数をISOとRFDにしたときは,第1正準変量で両者とも同じ特性を示していたが,第2正準変量では主にRFDに対してEMDが影響する傾向を示した.なおカテゴリカルCCAの結果も,ほぼ同様であった.
【考察】ISOは等運動性筋力全般と関与したが,TPFはEMDと関与する点で特性が異なった.このことから,筋の動特性を考慮するならば,これらは分けて解釈する必要があると考える.RFDはISOとTPFの両者の特徴を併せ持つと確認できたため,筋力ならびに筋の動特性といった質的な筋機能の指標として役立つと考える.出力をリアルタイムに記録できる筋力測定器を使えばRFDは計測可能であり,新たな評価方法として有益である.

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top