理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 695
会議情報

理学療法基礎系
足関節背屈他動運動抵抗の定量化の試み
ハンドヘルドダイナモメーターを使用して
*今村 純平松村 亮一野見山 清美高橋 精一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
リハビリテーションにおいて、関節を他動的に動かした時の抵抗(以下、他動抵抗)を評価することは重要であるが、臨床場面で利用可能な客観的評価は確立していない。ハンドヘルドダイナモメーター(以下、HHD)は、安価、簡便、省スペースであり、臨床での有用な筋力測定方法としての報告は多いが、他動抵抗を測定した報告はみられない。今回、足関節背屈時の他動抵抗をHHDで測定し、他動抵抗の定量的評価手法としての有用性について検証した。

【対象】
下肢に障害のない健常者で、(1)検者内再現性の検討は、5名(男性1名、女性4名、平均年齢26.4±7.1歳)の左右10関節、(2)検者間再現性の検討は、8名(男性4名、女性4名、平均年齢24.6±6.1歳)の左右16関節である。すべての対象者には研究の意図を説明し、同意を得た上で測定を行った。

【方法】
測定には、日本メディックス社製のPower TrackII COMMANDERを用いた。測定は背臥位で行い、測定前に5分間の安静時間を設けた。膝関節肢位は、30°屈曲位と完全伸展位の2通りで測定し、膝屈曲時は下腿を20cm程度の台に載せた。測定角度は背屈5°までとし、角度を一定にするため自作の補助器具を用いた。補助器具の設定は、測定の都度、検者自身が行い、測定時に補助者が踵の位置などを確認した。HHDのセンサーパッドを第1および第5中足骨頭を結ぶ線上に当て、足関節を他動的に動かした。測定時の角速度は遅いスピードとし、検者には、「2秒で測定を終了する程度のスピードで動かし、測定最終域で2~3秒静止する」ように指示した。対象者には、「測定に際し、協力も抵抗もしないでください。」と伝えたうえで連続4回実施し、平均値を求めた。同一肢に対する測定には3分以上の間隔をあけた。(1)検者内再現性の検討では、同一の検者(PT経験年数17年目男性)が同一時間帯に2日連続で測定し、(2)検者間再現性の検討では、3人の検者(PT経験年数17年目男性、PT経験年数5年目女性、学生女性)がランダムに測定した。統計学的検討は、級内相関係数(以下、ICC)を用いた。

【結果】
(1)検者内再現性の検討では、膝関節屈曲時ICC(1,4)=0.912、伸展時ICC(1,4)=0.904であり、(2)検者間再現性の検討では、膝関節屈曲時ICC(2,3)=0.985、伸展時ICC(2,3)=0.968であった。

【考察】
検者内再現性、検者間再現性とも、級内相関係数が0.9以上と良好な結果が得られ、HHDが他動抵抗を定量的に評価する手法として有用であることが示唆された。特に、検者間信頼性の検討において、性別、PT経験年数に関係なく良好な結果を得られたことは、方法を統一することにより施設間比較が可能であることを示唆した。今後、対象者数を増やして信頼性の検証を深めるとともに、痙縮との関係や訓練効果判定などを試みたい。

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top