理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 702
会議情報

理学療法基礎系
プレコンディショニング運動による廃用性萎縮筋の毛細血管-吻合毛細血管ネットワークのリモデリング
*藤野 英己上月 久治武田 功近藤 浩代村田 伸石井 禎基松永 秀俊梶谷 文彦
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】廃用性萎縮筋では,毛細血管-吻合毛細血管ネットワークの減衰がみられる.特に吻合毛細血管の消失が観察され,赤血球速度の増加等の血流動態に変化がみられる.本研究では,プレコンディショニング運動が毛細血管ネットワークのリモデリングに与える影響について,共焦点レーザー法による毛細血管ネットワークの三次元構造解析と共にリアルタイム定量PCR(polymerase chain reaction)法による血管増殖因子・関連因子の関与について検討した.
【方法】雄性Wistarラット(9週齢)を用いて,ヒラメ筋を対象とした.Morey法で2週間の後肢懸垂による廃用性萎縮群(HU),HU前にトレッドミル走行(20m/min, 傾斜20°,25分間)を行った群(Pre-Ex),および対照群の毛細血管ネットワーク構造,血管増殖関連因子を測定した.毛細血管ネットワーク構造は走査共焦点レーザー顕微鏡を使用して,骨格筋100μm厚の毛細血管を可視化し,毛細血管,及び吻合毛細血管の径や数,血管蛇行性の測定した.次にAGPC法(TRIzol)によって総RNAを抽出し,ランダムプライマーによる逆転写酵素によりcDNAを合成した,血管増殖関連因子(HIF-1alpha, KDR/Flk-1, Flt-1, angiopoietin-1, Tie-2),及び内在性コントロール18Sの各mRNAはリアルタイム定量PCR法によりRNAの増幅,及び定量化(Taqman Gene Expression Assays)を行った.各群の比較にはKruskal-Wallis検定,及び事後検定としてDunnを使用し,5%未満を有意水準とした.本研究は所属機関の動物実験指針に従って行い,動物実験承認を得ている.
【結果】Morey法による2週間の尾部懸垂でラットヒラメ筋の萎縮を誘導した結果,HIF-1alpha, KDR/Flk-1, Flt-1, angiopoietin-1, Tie-2 mRNAは減少した(p < 0.05)が,pre-Exでは,これら血管増殖関連因子の低下は減衰した.一方,Flt-1,KDR/Flk-1やTie-2レセプター mRNAに関しては,有意な増加が観察された(p < 0.05).また,毛細血管-吻合毛細血管ネットワークの減衰は抑制され,特に吻合毛細血管部の温存が観察された.
【考察・結論】Tie-2ノックアウト動物では,血管新生が抑制され,死亡すると報告されている. pre-Exは毛細血管-吻合毛細血管ネットワークの退行を抑制し,特に血管リモデリングに関与するAngiopoietin-1/Tie-2レセプター系の関与が示唆された.また,毛細血管は骨格筋細胞へ栄養や酸素を運搬する働きを持つため,毛細血管ネットワークの温存維持は,廃用性萎縮の進行や回復に影響を及ぶす可能性を示唆した.

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top