理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 703
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理学療法基礎系
エルゴメータ駆動中の体幹・下肢筋活動について
手の振りによる影響
*神谷 晃央新野 浩隆盧 隆徳林 伸浩寺林 大史牛場 潤一正門 由久木村 彰男
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キーワード: エルゴメータ, 筋電図, 体幹
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抄録

【目的】
近年,脳卒中片麻痺患者におけるエルゴメータ駆動の有効性が報告されている.脳卒中片麻痺患者は,座位バランスや移乗の問題があるため,セミリカンベントタイプのエルゴメータがよく使用され,その駆動時の下肢筋活動はすでに報告されている.しかしながら,駆動中の体幹筋活動の報告は少なく,歩行のように上肢の振りを合わせて駆動した場合における筋活動の報告は見当たらない.今回,その基礎的な研究として,健常者にて背もたれ無しでの手の振りを用いた駆動が,体幹を含めた下肢近位筋の筋活動に与える影響について検討したので報告する.
【方法】
対象はインフォームドコンセントを得た成人男性7名で,平均年齢は27.6歳.エルゴメータ駆動中の体幹・下肢筋活動の計測を,背もたれ無し座位にて行った.駆動時の上肢は「右手すりのみ;片手」,「腕を胸の前で組んだ姿勢;組み」,「手の振りを指示;手振り」の3パターンとし,駆動はアイソトニックモードで3Nm,回転速度はピッチ音に合わせた30rpmとし,その際の最大膝伸展角度は30°とした.被検筋は脊柱起立筋(ES),腹直筋(RA),外腹斜筋(OEA),股関節屈筋群(HF),大殿筋(GM),大腿直筋(RF)の両側各6筋とした.解析は50回転分の筋電図を整流・加算平均し,股関節を基準に屈曲相,伸展相に分け,筋活動パターンと筋活動量をそれぞれ比較した.
【結果】
筋活動パターンにおいて下部体幹のES・RA・OEAの3筋は,片手および組みでは,一周期を通して乏しい筋活動であった.一方,手振りでは,屈曲相に活動のピークが現れる傾向を認めた.その他の筋においては著明な変化を認めなかった.筋活動量の比較においては,片手・組・手振りの順に筋活動量が増加した.手振りを行った場合には,特にRAとOEAの活動量増加が著明であった.
【考察】
手振りを行うことで,下部体幹の筋活動は屈曲相にピークが出現し,特にRA・OEAの活動量の増加を認めた.セミリカンベントタイプのエルゴメータでの駆動姿勢は,起立座位型のエルゴメータと比較して,股関節の屈曲角度が増加し,骨盤後傾位となる.さらに手振りを加えることで,垂直姿勢保持のために,RA・OEAの活動が著明に高まったと考えられた.歩行では手振りが出現するが,エルゴメータ駆動中には,一般的に手すりを使用する.しかし,今回,背もたれ無しの状態で,手振りを行いながら駆動した場合,より体幹筋が活動した.今後はこの駆動方法を脳卒中片麻痺患者への運動療法に応用できるように検討していきたい.

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© 2007 日本理学療法士協会
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