理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1200
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理学療法基礎系
身体認知および距離感の学習には体性感覚および視覚による自己定位が関与している(第2報)
各年齢層における影響因子の比較
*西本 哲也渡邉 進
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キーワード: 視覚, 距離感, 自己定位
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抄録
【目的】我々は先行研究において、学童から高齢者までの体性感覚による距離感とその学習効果について閉眼10m歩行を通して検討した。結果、学習前は中年群が最も距離感が安定し学童・高齢群が不安定であったことや、全群で距離感覚の学習効果が認められた中でも青年群が最も顕著であったことなどの知見が得られた。それらの要因として、各群における体性感覚の熟練や視覚への依存性の差、および閉眼による恐怖感の程度などが関連していると考えられた。今回の研究はそれらを発展させたもので、閉眼10m歩行中の速度や側方への偏位距離の要素について調査し、体性感覚による自己定位とその恐怖感の影響についてより深く検討するために行った。
【方法】対象は学童群16名(平均9±1.8歳)、青年群16名(平均29±5.2歳)、高齢群16名(76±4.8歳)の計48名であり、現在特に重篤な疾患がなく二足歩行の自立している者であった。各被験者および学童の保護者には研究の主旨を理解していただき同意を得てから行った。開始線と10mゴール線、およびそれらとの垂直線を設定し、まず10m自然歩行時間(T)を開眼にて測定した。その後、(1)アイマスクで視覚を遮断し、被験者自身が10mであると思う直線距離を歩かせ、実際の10mゴール線とつま先との差(直線距離感)、および垂直線と両つま先間の中点との距離(側方偏位距離)をメジャーにて測定し、また10m予測点までの歩行時間(T1)を測定した(学習前)。(2)その後アイマスクを取り、距離感の学習のため10mの直線距離を3往復させ、再度アイマスク着用にて(1)と同様の測定をした(3往復後)。(3)次に10往復の学習をさせ(2)と同様に測定した(10往復後)。実験中は転倒防止のため追跡監視を行った。各群における各実験時期のそれぞれの比較を、また各実験における各群間での比較(Mann-WhitneyU検定p<0.05)を行った。
【結果】学習前の直線距離感は、青年群(-55cm)が最も安定し、学童・高齢群との間に有意差がみられた。学童・青年群は3往復後から、高齢群では10往復後に学習効果が有意に認められた。しかし高齢群は10往復後でも-85cmと不安定であった。側方偏位において、学童・青年群ではほぼ20cm以内に収まり特に問題なかったが、高齢群はどの時期においても40cm程度の偏位がみられ、多くは右側であった。歩行速度差(T1-T)では、青年・学童群は学習前は約3秒であったが、3往復後では約1秒に縮まった。高齢群はどの時期でも6秒以上であった。
【考察】青年群がより距離感をつかんでおり、空間的な距離認識や距離感を掌る歩幅についての身体認知能力の確保が示唆される。また学童・青年群は学習能力の時間的な要素としては高齢群よりも早いといえそうである。高齢群では予測距離を少なめに見積もる傾向があった。歩行速度差も有意に他の群と開きがあったことからも恐怖感の影響を最も受け易いものと思われる。
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© 2007 日本理学療法士協会
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