理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1230
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理学療法基礎系
バランスクッション上座位エクササイズ前後の片脚立位能力の変化
*斉藤 繁幸大日向 純永井 秀樹時永 広之佐藤 香緒里
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抄録

【目的】
体幹機能は座位保持のみならず、歩行の安定性・歩容に強い影響があると報告され、理学療法において体幹機能の重要性が指摘されている。我々は第41回日本理学療法学術大会において、バランスクッション(以下BC)を用いた体幹の協調性評価の可能性を報告した。今回我々は体幹の協調性とバランス能力の関連性を検討する目的で、体幹機能が影響すると考えられるBC上座位エクササイズ(以下BC上Ex)を行い、前後の片脚立位能力を比較した。
【方法】
対象は若年健常女性で利き足や腰部に整形疾患がなく、BC上で床から足部を浮かせ胸の前で腕を組んだ座位が不可能な者、あるいは体幹動揺が著しくBC上座位姿勢保持が困難で骨盤移動が不可能な者計10名とした。また、重心動揺に影響を与える体幹・下肢各関節の関節可動域や筋力、前庭機能、表在・深部覚のスクリーニング検査を行い問題のあった者は除外した。BC上ExはBC上座位で足部を浮かせ姿勢保持が可能となるように補助をし、座位保持が可能となった後に対象者自身による骨盤運動を実施した。BC上Exは1日5分、1週間で計5回行い、BC上Ex期間中は自主的にBC上座位や片脚立位の練習を行わないように指導した。重心動揺はZebris社製のWin PDMを用いて、BC上Ex前後で利き足での片脚立位を30秒間計測した。計測項目は重心動揺の外周面積(cm2)と総軌跡長(cm)とした。統計処理はt検定を用い、危険率5%未満をもって有意とした。
【結果】
対象者の中でBC上Ex期間中に脱落者はなく、1週間後10名全員がBC上での座位保持、更に骨盤運動も可能となった。片脚立位時の重心動揺の外周面積ではBC上Ex前29.6±11.1cm2、BC上Ex後22.3±7.9cm2、総軌跡長についてはBC上Ex前134.9±27.2cm、BC上Ex後119.8±31.3cmとなり両項目ともに有意な差を認めた(p<0.05)。
【考察】
BC上座位は支持基底面が狭く、座面も不安定であり、骨盤運動に上部体幹が対応し、協調的な運動を要求されると考えられる。BC上Ex後に対象者全員がBC上での骨盤運動が可能となったのは、BC上Exの期間を考えると参加運動単位の増加も一因と予想されるが、骨盤に対する上部体幹の協調的な運動が可能となったためであると考える。体幹機能以外の重心動揺に影響を与える項目に対しアプローチを行わなかったことから、片脚立位におけるBC上Ex前後の外周面積、総軌跡長の有意な差は体幹機能の変化によるものであると考えられる。これらBC上座位能力と片脚立位能力の変化から、BC上Exは体幹の協調的運動の向上に関与すると考え、姿勢制御の運動学習に応用できる可能性も示唆された。今後、姿勢制御と体幹機能の関係をより正確に捉えるためには動作解析装置などによる詳細な分析が必要であると考える。

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© 2007 日本理学療法士協会
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