抄録
【目的】ハンドヘルドダイナモメーター(Hand-Held Dynamometer:HHD)を用いた立位バランス評価指標における信頼性と計測方法について、make testとbreak testとの2つの方法における計測値の検者内および検者間信頼性について調査した。それらの結果よりHHDを用いたバランス評価指標においてmake testとbreak testとのどちらの方法が適切なのか検討した。
【方法】対象は麻痺を伴う脳卒中などの既往歴がなく、日常生活に支障をきたしていない50~70歳代の健常者(健常群)10名と施設および病院に入院中もしくは外来患者で、脳卒中発症後に歩行が監視レベル又は自立レベルである脳卒中片麻痺患者(CVA群)10名とした。健常群の内訳は男性1名、女性9名、年齢77.8±3.9歳、体重50.3±8.1 kgであった。CVA群は男性3名、女性7名、年齢77.3±11.4歳、体重53±11.7 kg、脳梗塞8名、脳出血2名、右片麻痺4名、左片麻痺6名であった。計測は理学療法室内で行ない、履物は普段履いている運動靴を使用した。機器は徒手筋力計(HOGGAN HEALTH INDUSTORIES社製MICROFET)を用い、肢位は足部を左右に10cm離した平行開脚立位とした。左右上前腸骨棘、腸骨稜、上後腸骨棘の6部位へmake testとbreak testをそれぞれ3回計測し平均値を用いた。そして、2つの検査法の計測値の検者内および検者間信頼性について検討した。統計処理は級内相関係数(ICC)を用い、統計学的有意水準は5%とした。
【結果】全対象におけるmake test およびbreak testの計測値は59.84±15.49N、39.93±15.36Nであった。健常群は58.97±19.68N、42.58±20.13N、CVA群は60.72±19.69N、37.29±14.03Nであった。make testにおける検者内および検者間ICCは全対象で0.947、0.950、健常群は0.931、0.928、CVA群は0.978、0.973であった。break testにおける検者内および検者間ICCは全対象で0.923、0.903、健常群は0.926、0.911、CVA群は0.931、0.895であった。
【考察】HHDバランス評価指標におけるmake testとbreak testとの信頼性について、健常者群とCVA群とを対象に検討を行なった。立位バランスが不良であるCVA群ではbreak test に比較しmake testのほうが平均値は高く、計測値が検出し易かった。また、全対象においてmake testの信頼性が高いことが示唆された。HHDバランス評価指標を行なう場合、make testが適切な計測方法であると考えられた。