理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1232
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理学療法基礎系
前方リーチ動作における足把持力の影響
*伊原 大尚甲斐 昌樹北澤 敦徳田 良英
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抄録
【目的】前方リーチ動作は人が取り得る作業範囲を理解し作業時の姿勢や動作に無理がないか評価する簡便な手法として臨床場面でも多く用いられている.前方リーチ動作移動範囲は,例えば筋力,身長などの体格,バランス能力などの要因が影響すると推測されるが,十分な検証がされるには至っていない.本稿は,前方リーチ動作移動距離と足把持力の関連について検討することを目的とする.【方法】健常成人91名(年齢20.6±1.5歳((男性48名(身長170.9±5.5cm),女性43名(身長159.17±5.43cm))に対し人間工学的実験研究を行った.調査項目は身体計測,前方リーチ動作移動距離,足把持力の計測とした.計測に際して前方リーチ動作は市販のメジャー,カーテンレール等で独自に考案した装置を用い,Functional Reach Testに準じて行った.また,足把持力の計測には握力計に改良を加えた村田らの足把持力計測器を参考に独自の装置を作製し,利き足の計測をした.【方法】まず,リーチ動作移動距離の身長による影響を軽減するために,日本人の人体計測データベース(1992-1994)(社団法人人間生活工学研究センター)にある身長の平均値(Mean;男性170.5cm,女性158.2cm)と標準偏差(S.D;男性5.9cm,女性5.4cm)を参考に男女別にそれぞれA群(Mean+S.D<A群≦Mean+2S.D),B群(Mean<B群≦Mean+S.D),C群(Mean-S.D<C群≦Mean),D群(Mean-2S.D≦D群<Mean-S.D)の4グループに分類した.各グループの人数はA群(男性8名,女性11名),B群(男性15名,女性13名),C群(男性19名,女性14名),D群(男性6名,女性5名)である.なお,Mean±2S.Dの範囲にないケースは分析対象から外した.次に各群の前方リーチ動作移動距離と足把持力のデータを計測し,Spearmanの相関分析により分析した.【結果】リーチ動作移動距離は,男性ではA群(48.4±7.8),B群(45.0±5.0),C群(42.4±7.8),D群(37.8±4.62),女性ではA群(41.5±5.59),B群(38.3±5.99),C群(38±5.02),D群(37.6±5.32)であった.足把持力は男性ではA群(12.2±3.0),B群(10.8±2.1),C群(10.7±3.3),D群(8.5±1.7),女性ではA群(8.6±2.6),B群(7.8±2.2),C群(6.8±1.3),D群(6.2±0.8)であった.前方リーチ動作移動距離と足把持力の相関係数は男性ではA群(r=0.287,p=0.245),B群(r=0.506,p=0.027),C群(r=0.436,p=0.031),D群(r=0.486,p=0.146),女性ではA群(r=0.574,p=0.032),B群(r=0.758,p=0.001),C群(r=0.484,p=0.040), D群(r=0.300,p=0.312)であった.【考察・まとめ】本研究結果より,前方リーチ動作に足把持力が関係していることが示唆された.前方リーチ動作移動距離の拡大が,前方への重心可動範囲の拡大につながると考えた.このことから足把持力を強化することにより,立位姿勢や片脚立位での安定性の向上につながると考えた.今後は転倒予防のために足把持力強化を目的とした運動療法へと発展させたい.
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© 2007 日本理学療法士協会
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