理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1241
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理学療法基礎系
洋式便座からの立ち上がり動作における手すり荷重方法に関する運動力学的解析
縦スイング式前方手すりを例として
*徳田 良英布田 健田中 眞二加藤 正男久保田 一弘
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抄録

【目的】立ち上がり動作において手すりは身体のバランスを保つほか,主に脚にかかる動作時の荷重を手や腕の筋力などで補う役割を果たす.この場合,手すりにかかる荷重の反力が人側に作用して脚への負担を軽減すると考えられる.本研究は,立ち上がり動作時に使用する手すりにかかる荷重に着目し,運動力学的検討をすることを目的とする.【方法】洋式便座と手すりを模した装置を用いた実験研究を行った.便座の座面高さは385mmで,手すり位置は高さを床から500~1100mm,水平位置を便座先端から0~600mmの範囲で,100mm間隔で変更できるようにした.手すりはステンレス鋼管に樹脂被覆を施した円形断面(径34φ),長さ650mmのものを使用した.荷重計測は,キスラー社製フォースプレートを縦置きして当該手すりを独自の装置にて接続し固定した.フォースプレ-トのサンプリング周波数は20Hzとした.データ記録,解析はDKH社製コンピューターソフトWADを使用した.被験者は日常生活に支障のない高齢者6名とした.内訳は男性3名(年齢74.3±5.7歳,身長159.2±7.0cm),女性3名(年齢73.0±2.6歳,身長143.8±3.1cm)である.被験者に実験の趣旨を十分に説明し同意の上,安全に配慮して行った.普段着,履物は自由で両手で手すりを使用して普段するように立ち座り動作を行わせた.そのときの手すり荷重を計測するとともに各試行で使いやすさを評価させた.また,動作をビデオで撮影し,視覚的に運動解析を試みた. 解析に先立ち,人側の要因として立ち上がり動作前の座位姿勢が関与することが考えられたため,座位姿勢を座位で膝関節の屈曲角度が90度未満のもの(足前型),90度程度のもの(足中間型),90度を超えるもの(足後型),および座面が高いもの(尻上がり型)の4つに分類した.本実験では足前型の該当者がいなかったので分析対象から外した。各座位姿勢での手すり位置の違いによる荷重方向(Y軸(上下)方向は上方を+、X軸(前後)方向は手すりから便座に向かう方向を+)をフォースプレートのデータおよびビデオ解析により抽出した.【結果】各被験者の手すりにかかる荷重は,1)足中間型で手すり位置に関わらず概してY軸方向が+,X軸方向が-(手すりを手前に引き下げるように使用)のケースおよびY軸方向,X軸方向ともに+(手すりを上方に引っ張り上げるように使用)のケースがあった.2)足後方型や尻上がり型で手すり位置によって荷重方向が大きく違っており,概して手すりの位置が身体に近い場合,Y軸方向は-で数値が大きく,X軸方向は+で数値が小さく,身体から離れた位置ではY軸方向は-で数値が小さく,X軸方向は+で数値が大きくなる傾向であった.3)好まれる手すりの方向は,便座先端から45度程度前方のものが多かった.【考察・まとめ】好まれる手すり位置について荷重方向と身体動作の方向がある程度合致していると解釈できる.一方, 手すりを上方に引っ張り上げるような力学的に合理的とはいえない使われ方もみられ興味深い.

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© 2007 日本理学療法士協会
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