理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1245
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理学療法基礎系
スクワット動作の運動学的解析
*具志堅 敏山崎 敦中俣 修
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抄録

【目的】
下肢関節疾患に対する理学療法では,筋力の回復とそれに伴う関節の安定性向上を目的に筋力増強運動が行われている。その方法として,Open kinetic chainおよびClosed kinetic chain(以下CKC)によるものがあり,状況に応じてそれらは使い分けられている。CKCの代表的な動作としてスクワット動作があり臨床場面でもよく用いられているが,患者への動作指導のポイントはセラピストによって異なる点がある。そこで,本研究ではスクワット動作中の足圧中心の位置変化を中心に動作解析を行い,スクワット動作の運動学的な特性について検討を行った。
【方法】
下肢関節に整形外科的既往のない健常成人11名(男性8名,女性3名,平均年齢18.3±0.5歳)を対象とした。被験者には研究の主旨を説明し,参加の同意を得た。
被験者には臨床歩行分析研究会が提唱する方法で,身体の11点(左右の肩峰,股関節,膝関節,外果,第5中足骨頭および右上後腸骨棘)に赤外線反射マーカーをつけた後,股
関節内外転0度となる程度に開脚立位をとらせ,両上肢は胸の前で組み,最も行いやすい自由な速度と速い速度の2通りの方法で,それぞれ連続して5回スクワット動作を行うように指示した。
動作解析には,3次元動作解析システム(VICON MX)および床反力計(AMTI社製Force Platform OR6-7)を用いて,反射マーカーの3次元座標と動作中の床反力データを記録した。サンプリング周波数は120Hzとした。
スクワット動作中の足圧中心前後方向移動距離を求め,それの足長に対する割合を算出した。また,動作中の股関節および膝関節の屈伸角度の関係についても検討した。
【結果】
スクワット動作中の足圧中心の移動距離は,自由な速度の時は8.0±2.3cm,速い速度では8.6±2.1cmであり,個人間でのばらつきが大きかった。また,動作中の平均足圧中心位置の足長に対する踵からの割合は,自由な速度では37.8±3.7%,速い速度では39.1±4.1%であり,対応のあるt検定を行った結果,速度間に有意差を認め,速い速度の方が足圧中心はより前方に位置していた。
スクワット動作中の股関節および膝関節の屈伸角度においては有意な正の相関関係を認め,これは動作速度によって変化しないことが明らかとなった。
【考察】
スクワット動作は荷重下で行う多関節運動であり,ある範囲内で重心をコントロールしながら,下肢関節の協調的な動きが要求される動作である。動作を指導する際の目安として,踵から足長の約38%のところで足圧中心をコントロールするように指導するのが好ましいと考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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