理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 97
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神経系理学療法
脳梗塞片麻痺患者の初回座位時における転帰の検討
*大塚 珠代梁原 佑子高橋 紳一
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キーワード: 脳梗塞片麻痺, SIAS, FIM
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抄録
【目的】当院では脳卒中片麻痺患者に対し、全身状態が落ち着けば発症2日目からでも車椅子座位を開始して早期離床を図り、自宅退院を目標にしている。在院日数の短縮が求められる昨今では、発症後早期に自宅退院もしくは転院への調整を行なう必要も生じている。今回、脳梗塞片麻痺患者における初回座位時のSIASおよびFIM得点と転帰について検討を行った。

【対象】2005年4月~2006年7月までに入院した初発脳梗塞片麻痺患者のうち、テント下病変の症例および麻痺のないラクナ梗塞、重篤な合併症や併発症がある症例を除外した27例(男性16例、女性11例)であり、年齢71.6±12.8歳、右片麻痺10例、左片麻痺17例であった。

【方法】対象症例を自宅退院群15例(73.2±10.7歳)と転院群12例(69.7±15.3歳)に分け、初回座位時に評価したSIAS総得点とFIM得点(総得点、運動項目得点、認知項目得点)について調査、統計的検討を行った。

【結果】自宅退院群では、発症から初回座位までの日数4.2±2.4日、在院日数16.7±7.3日、SIAS総得点68.0±4.0点、FIM運動項目得点63.1±11.0点であった。転院群では、発症から初回座位までの日数4.8±2.2日、在院日数28.8±8.4日、SIAS総得点49.8±9.7点、FIM運動項目得点38.5±10.0点であった。マン・ホイットニ検定の結果、両群間において、発症から初回座位時までの日数に有意差は認められなかったが、SIAS総得点、FIM運動項目得点では有意差が認められた(P<0.05)。SIAS総得点、FIM運動項目得点を判別因子x、yとして判別分析を行った結果、線型判別関数z=0.29x+0.16y-25.2を得た。このときZ>0なら自宅退院、Z<0なら転院と判別され、すべての症例が判別された結果と合致した。

【考察】SIASは片麻痺の程度のみならず、非麻痺側や体幹の評価も含んだ全身的な機能評価になっている。また、FIM運動項目は運動能力の程度により日常生活動作に必要な介護量を捉えやすく、両評価は転帰に反映しやすいと考えられる。しかし、各評価のみでは両群間で重なる症例があり、転帰を予測するには不充分であった。判別分析の結果より、脳梗塞片麻痺患者において初回座位時に評価したSIAS総得点およびFIM運動項目得点から転帰を予測することが可能であり、発症後早期から自宅退院または転院に向けた調整を進める上での一助となり、在院日数の短縮にも繋がると考えられた。
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© 2007 日本理学療法士協会
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