理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 732
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神経系理学療法
神経筋疾患に対する呼吸耐久力(BITI)の評価
*金子 断行今野 有里竹本 聡星野 英子直井 富美子加藤 久美子村山 恵子
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抄録
【目的】成人呼吸器疾患に古賀は呼吸耐久力(以下BITI)を評価指標として提唱している。神経筋疾患の呼吸筋疲労度は、肺活量(VC)・最大呼気流速(PCF)・最大吸気容量(MIC)等で推測できるが、BITIを用いた評価報告は少ない。今回神経筋疾患の呼吸筋疲労度をBITIにて把握できるかを目的に研究した。そしてBITIから神経筋疾患の運動療法を考察した。
【対象】対象は2004年11月~2006年8月に無作為に抽出した神経筋疾患18例(男6/女12)、延べ44例。平均14.5歳(7~29歳)。診断:筋ジストロフィー9、先天性ミオパチー6、脊髄性筋萎縮症2、ミトコンドリア脳筋症1。全例知的障害なし。
【方法】アイビジョン社製メテオアで測定したBITI値と人工換気実施状況・臨床症状を調査し、神経筋疾患のBITI値と呼吸機能の関連を検討した。古賀の分類を参考にBITI 0.05以下の呼吸筋疲労(-) 群をI群、呼吸筋軽度疲労群をIIa群(0.05<BITI≦0.15)、呼吸筋中等度疲労群をIIb群(0.15<BITI≦0.20)、呼吸筋疲労著明群をIII群(0.20<)として、44例のBITI値を分類。そして各群の人工換気の既往(非侵襲的人工換気:NIV・侵襲的人工換気:TIV) を調査した。さらに呼吸筋疲労度から運動療法を考察した。
【結果】I群:5例、IIa群:22例、IIb群:13例、III群:4例であった。I群は全例人工換気の既往がなかった。IIa群は13/22例(59%)がNIV使用。IIb群は8/13例(62%)がNIV またはTIVを使用。III群は3/4例(75%)がNIV使用。
【考察】I群5例は人工換気の既往はなく、呼吸筋疲労症状もなかった。III群4例の内24時間NIV装着は3例で、残り1例の人工換気非装着者(DMD24歳)は家庭事情でNIVは必要であるも実施困難な状況だった。人工換気の装着率は、I<IIa<IIb<III群と増加傾向を示した。これよりBITIは神経筋疾患の呼吸筋耐久力・呼吸筋疲労度を把握できると示唆された。呼吸筋疲労は臨床的に、浅速呼吸やVC・PCF・MIC・一回換気量などで推察できる。BITIで、より定量的に呼吸筋疲労を評価することで運動療法への示唆や治療効果の把握が期待でき、さらに人工換気導入の補助指標ともなり得る。呼吸筋疲労(-)患者には、MICを向上させる為の舌咽頭呼吸に代表される手技や胸郭運動性の維持・向上が必要と考える。呼吸筋疲労があり人工換気依存のケースは、人工換気では充分な胸郭拡張が得にくいため、胸郭拡張が必要である。呼吸筋への過度なエネルギー消費を防ぐため呼吸補助筋の柔軟性や伸張性を得ることも重要と考える。
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© 2007 日本理学療法士協会
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