理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 733
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神経系理学療法
人工呼吸器離脱を試みたALSの一例
呼吸器離脱時間の経時的変化
*松﨑 惠子瀬戸口 佳史松﨑 敏男大勝 洋祐
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抄録
【目的】人工呼吸器装着を余儀なくされた筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis;以下ALS)患者に対し「生きがい」作りを目的に多職種が協力し人工呼吸器離脱を約1年間試みた一例に対し離脱時間の経時的変化を検討した。
【症例紹介】症例は84歳女性、身長142cm、体重32kg、入院時MMT;上肢3~4,下肢3~4,握力;右9.5kg,左12kg motorFIM;15点であった。現病歴は平成15年5月言葉のもつれ嚥下障害出現,平成16年4月進行性球麻痺と診断された。平成17年3月より呼吸状態悪化,平成17年3月18日呼吸困難で受診し、その後外来で心肺停止となり気管内挿管し,人工呼吸器を装着して即日入院となった。
【経過】3月24日Bed sideにて理学療法開始。7月15日ウィーニング開始。7月28日人工呼吸器離脱30分間可能となり他病棟へリクライニング車椅子にて散歩。9月に肺炎を併発したが、その後、主治医指導のもと看護師、理学療法士の連携により人工呼吸器離脱1時間可能となりリクライニング車椅子での院内移動・屋外散歩も可能となった。
【方法】理学療法士・病棟看護師による1日の離脱時間の累計を月単位で算出し,平均離脱時間,離脱回数との相関について比較検討した。本研究は、患者の同意を得て行った。
【結果】1.月単位での離脱時間の累計;離脱開始時の7月は、385分であり10月~12月にかけて急速に増加し12月は、1206分まで可能となった。1月~4月にかけては、低下し500分程度となったが5月・6月は、850分程度に再び増加した。
2.月単位での平均離脱時間;7月~9月は、約20~30分、10月~12月は、約35分~50分、1月~4月約30分、5月~6月は、約40分であり気候の良い時期に増加し暑さ・寒さの厳しい時期では、減少した。
3.月単位での平均離脱時間と離脱回数;平均離脱時間と離脱回数との間には、正の相関が認められ離脱回数が増加するほど平均離脱時間も増加した。(R=0.75 p<0.005)
【考察】人工呼吸器離脱を1年間試みて離脱時間の経時的変化を検討した。今回の結果より、暑さ・寒さの厳しい時期では、体力を消耗するなど気候に大きな影響をうけるのではないかと思われる。患者は、高齢であるにもかかわらず人工呼吸器離脱を1年間試みることができた。要因の一つは、自覚症状を重視し、気候の変動に合わせた無理のない呼吸理学療法を行ったこと。もう一つは、チームアプローチにより実施したことにあると思う。患者・家族へ主治医から説明、同意を得て行い情報の共有・離脱時の姿勢・リスク管理の徹底を図った。これからも患者様中心の安心と信頼の得られる医療を提供できるようにしたい。

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© 2007 日本理学療法士協会
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