理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 776
会議情報

神経系理学療法
脳血管障害患者の歩行自立を決定する要因
*梅野 晃中屋 さおり渡辺 泉柴田 和寛高田 厚志朝日 信裕
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】脳血管障害患者の歩行が自立することは活動量の増加につながり、歩行の安定化や退院するための大きなきっかけとなる。しかし歩行自立を判断する際、現在のところ理学療法士の経験に基づく主観的判断で決定されている。歩行自立を決定する理学療法士の主観的判断の中には何らかの評価があると考えられる。そこで今回我々は、歩行を監視から自立へと決定する際に用いることができる客観的な評価項目の検討を行ったので報告する。
【対象】対象は当院に入院中の脳血管障害患者のうち補助具を使用せず立位可能な監視歩行レベル以上の方で、明らかな高次脳機能障害や認知症,下肢に関節痛などの整形疾患を有していない21例とした。平均年齢59.8歳(38歳~77歳)。男性13例、女性8例。疾患の内訳は脳梗塞9例、脳出血12例。右片麻痺12例、左片麻痺9例。下肢Brunnstrom Stage、III9例、IV7例、V5例であった。なお対象者全員に本研究の主旨を説明し同意を得た。
【方法】歩行能力は様々な要素により成り立っているが、今回我々は、歩行スピード、歩数、ファンクショナルバランススケール(以下FBS)、荷重率(片側最大荷重/体重)を測定した。歩行スピード、歩数の測定は10m間を4回測定し、その平均を算出した。荷重の測定は市販のアナログ体重計を2台使用し,通常立位時の左右荷重量,麻痺側への最大荷重量,非麻痺側への最大荷重量この最大荷重から体重で除した荷重率を算出した。そして各評価項目につき歩行自立群(以下自立群)と歩行監視群(以下監視群)で比較検討した。統計処理にはt検定を使用し、統計的有意水準5%とした。
【結果および考察】歩行スピードは監視群29.9±12.8秒(平均±SD)、自立群19.0±9.2秒、歩数は監視群28.9±5.7歩、自立群24.1±3.8歩と有意差を認めた。FBSでは第11項目の360度回転において監視群1.8±0.7点、自立群3.0±1.0点、第12項目の段差踏み換えにおいて監視群0.6±0.9点、自立群2.3±1.4点と自立群が有意に高かった。FBSの合計得点においても、監視群44.2±6.0点、自立群50.0±5.6点と監視群-自立群の間に有意差を認めた。荷重率においては麻痺側への最大荷重でのみ監視群58.9±12.3% 、自立群73.9±11.1% と有意差を認めた。麻痺側の随意性やバランス、筋力などを総合的に反映するといわれている歩行スピード、筋力と相関がある歩数、またバランスの尺度であるFBSにおいて合計点、特に麻痺側の機能をとわれる課題である第11項目、12項目、そして麻痺側の支持性である麻痺側への最大荷重率において有意水準5%で差が認められた。このことはこれらの要素が歩行自立を決定するための要素である可能性があると考えられる。
著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top