理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 786
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神経系理学療法
当院回復期リハビリテーション病棟入棟患者における費用効果分析について
*北村 俊英石本 貴徳前田 吉樹小寺 正人末吉 勝則日高 正巳今脇 節朗石川 誠
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抄録
【はじめに】医学的リハビリテーションの効果とその実施に係る経済的側面を考慮した報告は少ない。そこで我々は回復期リハビリテーション病棟(以下回復期病棟)入棟中の脳血管疾患患者における費用対効果をFIMの変化を基準に調査したので報告する。
【対象と方法】当院回復期病棟に2005年4月1日以降に入棟し、2006年3月31日までに退院した脳血管疾患患者(139名)のうち、入棟時FIMでの改善幅が狭い入棟時のFIMが106点を越える患者並びに当初立案したリハビリテーション総合実施計画書(以下リハ実施計画書)に基づく治療展開ができなかった在棟日数が3週間以内の患者を除く103名(脳梗塞:56例・脳出血:38例・その他:9例)を対象とした。方法は後ろ向き研究とし、診療記録並びにリハ実施計画書から、診断名・性別・年齢・入棟までの期間・在棟日数・転帰先・入棟時と退院時のFIM・リハビリテーション実施単位数(以下リハ実施単位数)・高次脳機能障害の有無を調査した。また、入院費は回復期病棟入院基本料と入棟期間内のリハ点数の合計を合算し分析・検討を行った。分析は重回帰分析とし、年齢、発症から入棟までの日数、入棟時と退院時FIM得点ならびにその変化点数の5変数を独立変数、入院費を従属変数として、ステップワイズ法を用いて実施した。統計処理は、SPSS14.0J(SPSS社製)を用いた。
【結果】在棟日数は95.6±27.09日(48~180日)で、自宅復帰率は65.1%であった。FIMは入棟時57.0±24.12点、退院時87.4±30.22点であり、入棟中の改善幅はFIMの差にて30.4±21.03点であった。リハ実施単位数は328.5±126.28単位、入院費は2427562.1±729915.9円であった。重回帰分析の結果、採択された変数は、FIMの変化と入棟までの日数の2変数であり、それぞれの非標準化偏回帰係数は8301.93(p=0.016)と7631.23(p=0.031)であった。
【考察】まず、最初に採択されたFIMの改善に伴い入院費が増えるという結果は、貴重な医療費を使うもののそれ相応の機能の改善が図られていることを示している。次に、入棟までの日数が採択され、入院時のFIM点数が採択されなかったことから、早期より回復期病棟に入棟することで入院費を抑制する可能性があることが考えられた。また、その一方で、入棟までに時間を要する症例においては、急性期での治療に日数を必要とする状態であり、機能回復にも時間を要する状態であることを意味している可能性も含んでいるものといえる。
【結語】FIMの変化のみですべてを捉えるには限界があるが、費用対効果の視点から、リハ実施計画書に基づいた計画的な治療の有効性を示すことにつながるものといえる。
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© 2007 日本理学療法士協会
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