理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 787
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神経系理学療法
回復期リハビリテーション病棟の導入が脳血管障害患者のADLに与える効果
東京都北西部における一施設での検討
*志村 圭太小林 修二佐藤 広之啓利 英樹
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抄録
【目的】当院は慈誠会グループ最初のリハビリテーション(以下リハ)専門病院として1984年に開院し、その後総合リハ承認施設として、主に脳血管障害(以下CVA)患者のリハを担い、2002年7月には回復期リハ病棟45床を開設し、より集中的なリハサービスを提供してきた。回復期リハ病棟入院患者のADLについては多くの報告があるが、回復期リハ病棟開設前と開設後でリハ効果を比較した例は少ない。本研究の目的は、回復期リハ病棟のコンセプトである「発症早期に集中的リハを提供する」ことの効果を実証するために、回復期リハ病棟開設前と開設後における対象者の発症から入院までの期間(以下POA)とリハ実施時間の2要因の変化に着目し、ADLに与える効果を明らかにすることである。
【方法】対象は初発のCVA患者で入院から3ヵ月後までを追跡可能であった316例で、回復期リハ病棟開設前の1999年3月から2002年6月までに入院した158名を一般群、開設後の2002年7月から2004年6月までに入院した158名を回復期群とした。基本属性として、性別、年齢、診断名、脳損傷側を群間比較した。そのうえで、開設前後の入院から1ヶ月間および3ヶ月間のリハ実施時間(分)とPOA、Berthel Index(以下BI)の入院時、1、2、3ヵ月経過時の機能的帰結および機能的回復の伸びを示す入院から3ヶ月間の機能的利得を比較した。統計処理はStatview ver.5.0を用い、危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】基本属性の比較では2群間で有意差は認められなかった。POAは一般群が2.7±1.9ヶ月、回復期群が1.6±0.8ヶ月、リハ実施時間では入院1ヵ月間(一般群1539.0±605.3、回復期群2081.8±425.3)、3ヶ月間(一般群4433.8±1591.4、回復期群6083.8±1111.8)とそれぞれ有意差が認められた(p<0.0001)。BIにおける機能的帰結の中央値は、入院時(一般群30、回復期群30)、1ヶ月後(一般群50、回復期群50)2ヶ月後(一般群55、回復期群60)、3ヶ月後(一般群65、回復期群65)で有意差が認められなかったが、入院から1ヶ月間の機能的利得(一般群5、回復期群10)には有意差が認められた(p<0.05)。
【考察】対象者における回復期リハ病棟開設前後の基本属性には違いが認められず、両群は等質と考えられた。本研究結果では、回復期リハ病棟開設後のPOAは有意に短縮し、リハ実施時間は有意に増加した。他方ADLにおいては機能的帰結には変化が無く、入院から1ヶ月間の機能的利得だけが有意に増加した。この結果は、因果関係については言及できないが、回復期リハ病棟において発症早期に集中的リハを実施する効果は、ADLの機能的帰結ではなく入院1ヶ月までの機能的利得の増大に現れると考えられ、入院期間短縮につながる可能性が示唆された。
【まとめ】CVA患者が回復期リハ病棟において発症早期に集中的リハを受ける効果は、入院1ヶ月までの機能的利得の増大に現れ、入院期間短縮につながる可能性が示唆された。
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© 2007 日本理学療法士協会
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