抄録
【目的】
脳血管障害後片麻痺患者の立ち上がり動作自立は歩行動作へと繋がる練習として重要である。本研究の目的は電動バランスボードを用いて前後傾斜させることで立ち上がり動作の促通に関する効果について検討した。また、後方傾斜時の前方立ち直り反応の違いによる体幹機能の促通の違いについても検討した。
【方法】
対象は脳血管障害後片麻痺患者7名(左片麻痺4名、右片麻痺3名)で平均年齢66歳(発症後3-12ヶ月経過)。すべての対象者にインフォームドコンセントを行い、了解を得ている。被験者には、足底接地した座位から立ち上がり動作連続5試行し、時間計測を行った(STS課題)。座位にて可能な限り前方に非麻痺側上肢を伸ばす課題FRT(functional reach test)を3回施行した(S-FRT課題)。傾斜介入:電動バランスボード上座位で5deg/secで10°傾斜する電動バランスボードの前傾(前傾刺激)10回、または後傾(後継刺激)10回の介入刺激を行い、被験者には直立座位を保持するように求めた。その後、前述のSTS課題とS-FRT課題を行った。STS課題と後傾刺激介入時に側方よりビデオ撮影を行った。画像解析は被験者の麻痺側頭部・肩峰・大転子・膝裂隙中央に反射マーカーを貼付し、撮像した画像から動作分析ソフト(DKH社製Frame-DIAS2)を用いて二次元の股関節と頚部の角度を算出した。前傾・後傾刺激前後のSTS課題・S-FRT課題の結果の比較と、後傾刺激介入時の股関節の可動角度と両課題の変化の相関を求めた。
【結果】
電動バランスボード刺激前後のS-FRT課題において、前傾刺激(介入前37.8±5.38cm、介入後40.4±4.14cm)・後傾刺激(介入前35.9±7.44cm、介入後39.6±6.86cm)ともに到達距離は介入前と比較し介入後で増大する傾向がみられた。STS課題において、後傾刺激介入後に時間の短縮する傾向が認められた(介入前33.3±7.07sec、介入後29.76±5.46sec)。後傾刺激介入時の股関節の可動角度とSTS課題の変化には中等度の相関が認められた(r=0.64)。
【考察】
電動バランスボードの前傾刺激においては重心の前方移動が促通され、後傾刺激においては前方への立ち直り反応を促通することによって、S-FRTの距離とSTSの時間を改善させたものと考えられる。また、後傾刺激により身体を立ち直らせることで、腹部の筋収縮を促通させることで、S-FRTとSTS課題の結果が改善したものと考えられる。電動バランスボードによる体幹前後刺激は、片麻痺患者の立ち上がり動作とバランス反応を改善する上でひとつの重要な方法であることが示唆された。
【まとめ】
今回は動作とパフォーマンスの検討を行ったが、今後は症例数を増やし、立ち直り反応による体幹機能の練習効果の違いについて検討していきたい。