抄録
【目的】
従来から,体幹機能は歩行やADL,リーチ動作に重要な因子であることが挙げられている.片麻痺患者(以下,CVA)においても,同様に立位バランス,歩行,ADLとの相関が示され,その重要性が指摘されている.しかし,施設などで理学療法を維持的に継続している慢性期の対象に対して,具体的な介入効果についての検討は散見される程度である.
本報告の目的は,慢性期CVAに対する体幹筋力強化をパワーリハビリテーション(以下,パワーリハ)により行い,その効果を検討することである.
【対象と方法】
当施設にて,入所もしくは通所でリハビリテーションを実施している利用者で,事前に本研究の趣旨を説明し同意を頂いた,歩行可能な慢性期CVA15名とした.平均年齢71±8.6歳,平均発症期間74.5±64ヶ月であった.
対象者を3ヶ月以上継続している理学療法に加え体幹へのパワーリハを追加する群(P群)と,現在までの3ヶ月以上継続している理学療法のみを継続するコントロール群(C群)とに分けた.評価項目は,アニマ社製下肢荷重計グラビコーダG‐620を用いた重心動揺計測(総軌跡長,外周面積),Functional Reach Test(FRT),Timed Up& Go(TUG),10m歩行,Hoggan Health社製徒手筋力測定器(HHD)MICRO FET 2を用いた体幹屈曲・伸展筋力,アンケートによる意識調査を行った.体幹筋力強化には,Proxomed社製Compass トーソエクステンション/フレクションを使用した.負荷量は,HHD評価結果による最大筋力の40%とした.また,介入期間は4週間として,介入前と介入後2週間,4週間目に各々再評価を行い,機能を比較検討した.
【結果と考察】
C群では,初期評価時から2週間目,4週間目で有意な変化を認めなかった.しかし,P群では4週間目において体幹筋力,立位バランスの改善を認めた.
CVAの体幹機能は麻痺側,非麻痺側で活動性に左右差が出現し,安定した姿勢保持も困難な場合が多いとの報告もある.今回,パワーリハは慢性CVAに対してdisuse neuron muscular systemの再活動化による体幹筋力,立位バランスの改善に有用であることが示唆された.今後,ADLやパフォーマンスへ与える影響,非マシントレーニングによる効果,SF-36などによる心理面の検討も必要であるが,慢性期片麻痺患者の体幹機能へのパワーリハビリテーションアプローチが有用であると考えられる。