理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 233
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骨・関節系理学療法
前十字靭帯再建術後3ヵ月におけるジョギング開始基準の検討(第2報)
*佐藤 正裕太附 広明椎名 美沙丸尾 莉紗加賀谷 善教
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抄録
【はじめに】我々は先行研究にて前十字靭帯(ACL)再建術後患者の等速性脚伸展筋力とジョギングの関係を検討した。その結果、脚伸展筋力(60rpm)とジョギング時の疼痛、不安感で有意な相関を認めた。またジョギング基準(速度9km/h、距離2000m)の達成群と非達成群で脚伸展筋力に有意差を認め、ジョギング開始の筋力指標を患健比90%前後と示唆した。しかし、もともとの体力レベルによりジョギングレベルを考慮すべきと考えられる。そこで今回は脚伸展筋力によるジョギング開始基準の検討に加え、年齢や活動レベル、性別がACL再建術後のジョギングにどのように影響するかを検討した。
【対象】当院にてACL再建術を施行した39名(男性16名、女性23名、年齢24.1±9.4歳、身長166.0±7.6cm、体重63.4±10.7kg)で術後期間は13.4±0.8週だった。受傷前の活動レベルはADLレベル(以下A群:ほとんどスポーツ活動に参加しない)4名、レクレーションレベル(以下R群:週1、2回参加)18名、競技レベル(以下C群:週3回以上参加)17名だった。
【方法】脚伸展筋力はStrengthErgo.240(三菱電機社製)を用いた等速性筋力測定(回転数60rpm)とし、患側および健側ピークトルクの体重比と患健比を算出した。ジョギングはトレッドミル(酒井医療社製)上で行い、速度は最高9km/h、走行距離は最大2kmまでとした。速度の上昇と途中中止は患者の任意で決定させ、最終速度と距離を記録した。評価はジョギング後に疼痛と不安感を10cmのVisual Analog Scale(VAS)を用いて測定した。脚伸展筋力によるジョギング基準可否判別の精度はROC曲線から解析し、感度と特異度のバランスの良いカットオフ値を閾値とした。活動レベルおよび性別、年齢とジョギング評価との関係をロジスティック回帰分析とSpearmann順位相関検定を用いて検討した(P<0.05)。
【結果および考察】脚伸展筋力は患側1.98±0.33Nm/kg、健側2.15±0.35Nm/kg、患健比0.87±0.10、疼痛は1.3±1.5cm、不安感は2.7±2.2cmだった。平均速度8.4km/h、平均距離1750mで基準を達成した症例はA群1名、R群8名、C群9名だった。患健比のカットオフ値は0.89で感度は0.73、特異度は0.93であり先行研究での予測値と同程度の結果となった。活動レベルおよび性別とジョギング評価に有意な回帰を認める項目はなかったが、年齢では速度(r=-0.608)および距離(r=-0.415)、疼痛(r=0.407)で有意な相関を認めた(P<0.05)。以上よりACL再建術後のジョギング開始に際し、疼痛や不安感が生じないように脚伸展筋力と年齢によって適切な負荷量を設定することが望ましいと考えられる。
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© 2007 日本理学療法士協会
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