抄録
【目的】
膝前十字靭帯(以下ACL)再建術後スポーツ復帰に関しては、多くの報告がなされている。競技者および現場の指導者は早期のスポーツ復帰を望み、リハビリテーション(以下リハ)も短期化されてきた。しかし、早期復帰によって膝の不安定性、再断裂の危険性も危惧されている。
当院では半腱様筋腱(以下ST)に必要に応じて薄筋腱(以下G)を追加し、多重折りによる再建術を施行している。プロトコールはACL再建術後6ヶ月以降でのスポーツ復帰を目標としている。今回、ACL再建術後のリハ期間を調査し、今後の課題を含め検討した。
【方法】
対象はACL再建術後とし、2003年8月から2006年7月までの3年間に「茨城県南スポーツ医科学センター」を利用した35例35膝(年齢21.9±6.9、男性20例、女性15例)とした。調査内容は、スポーツの活動形式(高校、大学、レクレーション)、終了時のスポーツレベル、リハ期間について経過記録をもとに後方視的に行った。
【結果】
全例の術後リハ期間は平均218.2±136.0日であった。スポーツの活動形式別では高校生が平均263.5±142.4日(12例)、大学生が平均168.3±98.8日(13例)、レクレーションレベルの競技者が平均228.6±148日(10例)であった。
リハ終了時のスポーツレベルは、完全復帰レベル(A群)、練習完全参加レベル(B群)、練習一部参加レベル(C群)、メディカルリハレベル(D群)とした。
A群は14例、年齢は平均22.5歳。リハ通院期間は平均339±127日。B群は6例、年齢は平均18.7歳。リハ通院期間は183±9日。C群は11例、平均22.3歳。通院期間は147±49日。D群は4例、平均24歳。通院期間は42±21日であった。
C群、D群においては職場の事情、卒業など社会的要因により通院の継続が困難となり、リハ期間の短縮が見られた。
【考察】
A群とB群の通院期間は平均261日である。通院期間には、スポーツ復帰後のコンディショニング目的の通院が含まれている。
仁賀はスポーツ復帰時期を通常の練習を支障なくこなせるようになったか、試合に出場した時期とし、ST+GにてACL再建術後6ヶ月以内にスポーツ復帰を果たした群の平均は5.5ヶ月で、術後7ヶ月以降に復帰した群の平均が10.4ヶ月であったと報告している。本研究の結果と同様に、スポーツ復帰までは長期を要している。
平成18年4月から施行された診療報酬の改定により、運動器疾患は150日の日数制限が設けられたが、今回の調査により、当院のACL再建術後患者に関しては150日以内ではスポーツ復帰までリハを継続できないという結果であった。特にトレーナーや指導者が不足している高校生、レクレーションレベルの競技者にとっては、十分なアスレチックリハが行えない可能性を残していると考えられた。