理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 284
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骨・関節系理学療法
関節リウマチに対する中足骨頭切除術後の理学療法
*小西 聡宏島津 尚子小林 寿絵向山 ゆう子熊木 由美子畠中 泰司水落 和也
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抄録

【目的】関節リウマチ(RA)は,病態の長い経過の中で高度の外反母趾や重複趾など前足部変形が認められ,足底胼胝の形成などにより歩行障害をきたす.当院では前足部変形に対し,中足骨頭を切除するLelievre法が施行されている.術後はクリニカルパス(パス)に沿って管理し,早期から術部への負荷を軽減しながらの荷重歩行を実施している.この荷重歩行をスムーズに行い,踵荷重を確実にするために前足部部分免荷装具(免荷装具)は必要である.当院での免荷装具を使用した術後の理学療法(PT)について報告する.
【手術後のパスと免荷装具】パスは術後3日から免荷装具にて患肢全荷重開始.4日よりPT開始.21日にK-wire抜去.22日で退院となる.免荷装具は市販の靴に踵から中足部まで補高した装具で,内後方傾斜のウェッジであり,外側を5mm高く設定している.入院前に処方し,歩行開始時までに完成とする.
【対象及び方法】対象は当院で2005年6月から2006年10月までにLelievre法を施行した患者6例8足である.4例片側のみ,2例両側同時に手術を行った.全例女性で平均年齢は64.5歳,罹患年数は27.5年,手術から退院までの平均期間は23.5日,PT施行期間は19.2日であった.これら対象のPT経過,移動能力等を調査した.また,外来フォローができた症例の足圧分布ならびに足圧中心(COP)軌跡を術前と退院後に測定した.測定にはニッタ社製F-スキャンVer.4.12を使用し,歩行条件は被験者の自由速度とした.
【結果】5例はほぼパス通りにPTを施行し,独歩にて退院に至った.1例は上肢変形や3関節の置換術の既往があり,パス通りにPTが進められず入院が延長した.5例中3例にも上肢変形や創部痛,腫脹があり,独歩を獲得するまでにパスの設定より長い期間を要した.最終的には全例が入院前の移動能力を獲得した.足圧分布では術前に比し術後は両側で圧を分散させることが明らかとなり,また術側のtoe off時の足趾の圧分布が確認できた.両側のCOP軌跡では踵接地後,外側に移動し立脚中期以降に母趾球方向へカーブを描くものであった.
【PTとその留意点】立ち上がり,立位のバランス強化は,前足部接地を避けるために踵荷重を促し,歩行では外転歩行で揃型か後型により創部の痛み,違和感の軽減と前足部の接地を予防する.抜釘後はMTP関節での足趾屈伸,外転の自動介助運動を促す.また足趾の短縮予防のために長軸方向へ徒手的に牽引する.
【考察】PTは術後の創のケアをしつつ,早期から歩行させるには変形,痛み,上肢への負担も軽減させることが求められる.この免荷装具はその役割を担っている.安定した踵歩行を促進するには立位バランス能力が重要で向上を図ることもPTの役割である.非術側にも変形をきたしている症例もおり,非術側の足底の対応が今後の課題である.

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© 2007 日本理学療法士協会
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