理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 285
会議情報

骨・関節系理学療法
人工膝関節置換術における術前状態が術後獲得可動域に及ぼす影響
手術までの疼痛期間に注目して
*木賀 洋石井 義則高橋 賢坂下 大
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】人工膝関節置換術の術後リハビリテーションを展開するうえで可動域獲得は疼痛除去とともに重要な項目である。これまで術後膝関節可動域については術前可動域が影響しているという報告もあり、臨床上でそうした症例を多く経験する。そこで今回、術前の膝関節可動域が術後の膝関節可動域に関連しているかを検証するとともに、主訴である疼痛に注目し、荷重時痛を生じてから手術までの期間(以下、疼痛期間)と術後の膝関節可動域の関連についても調べることを目的とした。
【対象】平成14年11月6日から18年5月10日までに外傷性を除く変形性膝関節症に対し当院にてハイブリッド人工膝関節置換術を施行した症例78例91関節を対象とし、PCL温存群44関節(男性4名、女性40名、平均年齢72.1±7.0歳、平均入院日数42.4±19.3日)と切除群47関節(男性7名、女性40名、平均年齢74.4±6.8歳、平均入院日数43.9±25.5日)に分類した。機種は全例モービルベアリング型LCS人工膝関節システム(Depuy社)を使用し、PCL温存・切除の選択は無作為に行われた。術後の理学療法は、翌日より全荷重を許可し、術後1週目までは自動関節運動を行い、2週目以降は他動的関節運動も実施した。
【方法】術前に問診し、疼痛期間について調査を行った。膝関節可動域は術前、術中(麻酔下)、術後(1ヶ月時)に測定した。PCL温存群と切除群それぞれにおいて術前と術後の膝関節可動域、疼痛期間と術後の膝関節可動域の関連を分析した。統計学的解析はピアソンの相関係数算出(Statvie-J5.0)により処理を行った。なお、有意水準は5%とした。
【結果】PCL温存群では術前平均疼痛期間が6.7±5.4年、膝関節可動域は術前118.9±19.7°(屈曲平均126.7°、伸展平均-7.8°)、術中121.3±6.8°(121.7°、-0.5°)、術後97.8±16.7°(104.1°、-6.3°)であった。PCL切除群では術前平均疼痛期間が7.2±6.0年、膝関節可動域は術前110.6±21.7°(123.2°、-11.6°)、術中116.3±12.11°(117.4°、-1.1°)、術後93.0±18.7°(100.2°、-7.3°)であった。術前と術後の膝関節可動域についてはPCL温存群でr=0.4、p=0.007、PCL切除群でr=0.5、p=0.0006であった。疼痛期間と術後膝伸展可動域についてはPCL温存群でr=0.03、p>0.05、PCL切除群でr=0.042、p>0.05であった。
【考察】術後1ヶ月における膝関節可動域は術前可動域との間に有意な関連を認めたが、手術に至るまでの疼痛期間との関連は認めなかった。今後、術前の疼痛の影響を分析していく上では、疼痛による二次的要因についても評価していく必要がある。

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top