理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 309
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骨・関節系理学療法
大腿骨頚部骨折患者の立ち上がり動作の制限因子
*堤 沙織中本 健一
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抄録
【目的】
大腿骨頚部骨折術後患者の理学療法の経過中、脳障害で生じる観念運動失行を有する患者でみられる立ち上がりの特徴、立ち上がり時に健側を使用しての動作が自立出来ない、トイレ動作において立ち上がりが可能であるにも関わらず、平行棒内での立ち上がりは困難となるなどの意識的な動作と無意識的な動作に解離を呈する症例を経験した。そこで今回、立ち上がりを阻害する原因として筋力低下、関節可動域制限、疼痛などの骨折術後の機能障害だけでなく、観念運動失行の影響について分析し考察した。
【方法】
2006年8月から10月まで当院に入院した既往に脳卒中の無い大腿骨頸部骨折患者26名を対象に、理学療法開始時の痛み、関節可動域、筋力、観念運動失行、立ち上がり動作の状態を統計にとった。年齢は37~96歳で平均77.2歳、男性4名、女性22名であった。筋力は健側上下肢のMMT、関節可動域は術側股関節屈曲角度、痛みはNumerical Rating Scale(NRS)を用いて痛みの程度を数値化した。観念運動失行を有する患者の有無及び動作の特徴を集計した。立ち上がり動作の評価については自立、修正自立、監視、要介助、全介助の5段階で評価した。
【結果】
立ち上がり動作の介助群(要介助、全介助)が66.7%であり、監視・修正自立群は33.3%であった。また両群での疼痛の程度を比較すると、介助群はNRS:4.8、監視・修正自立群はNRS:4となった。また術側の関節可動域は介助群:66.8°、監視・修正自立群:63.3°であった。健側の筋力低下は両群全患者に認めなかった。介助群は観念運動失行を100%有していた。一方、監視・修正自立群は0%であった。
【考察】
大腿骨頚部骨折は一側下肢障害であるため健側で患側の機能を代償可能であるにも関わらず、介助を要したものが66.7%であった。全患者に健側の筋力低下を認めなかった為立ち上がりが自立出来ない因子としては除外出来る。疼痛の程度も両群比較で明らかな差は認めなかった為疼痛も立ち上がり動作の制限因子としては考え難い。関節可動域制限においても明らかな差を認めなかった。
既往として脳卒中も無く、機能障害としても筋力低下、関節可動域制限、疼痛のような制限因子が除外出来ているのにも関わらず立ち上がり動作が不可能になる原因として観念運動失行を考える。観念運動失行が存在する事で健側の使用障害がみられ、また実際の日常生活場面で可能となっている立ち上がりが理学療法実施場面で困難となっていると考えられる。
【まとめ】
今回の発表において、大腿骨頚部骨折患者の急性期での立ち上がり動作では以下のようなことが言える。
・大腿骨頚部骨折患者の理学療法開始時、立ち上がり動作の介助群の患者100%に観念運動失行を認めた
・筋力低下、関節可動域制限、疼痛のような骨折術後患者にみられる機能障害による影響は少なかった
・理学療法実施上、観念運動失行の評価も必要となる
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© 2007 日本理学療法士協会
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