理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
地域別に見た学童軟式野球選手の投球障害の頻度と受診傾向の違いについて
岡邨 直人関根 裕之遠藤 剛田中 康雄大野 健太西澤 岳之山本 智章
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Cb1156

詳細
抄録
【はじめに】 新潟県では平成19年度より野球肘検診を行っており、平成21年度には野球障害ケア新潟ネットワークというコメディカルを中心としたボランティアの団体が発足した.この野球障害ケア新潟ネットワークを中心とした活動により,検診事業や啓発活動は新潟市内だけでなく全県に広がりをみせている.そこで今回,新潟市(検診5年目)と長岡市(検診2年目)の学童軟式野球選手の投球障害と受診傾向などの実態を比較する事によって今後の長岡市はもちろん、他地域の検診事業,啓発活動拡大,充実の一助とすることを目的とした.【方法】 対象は平成23年に新潟市学童新人野球大会で検診を受けた学童軟式野球選手498名のうち,投手捕手経験者185名(6年生11名,5年生126名,4年生40名,3年生8名),長岡学童野球大会で検診を受けた学童軟式野球選手146名のうち,投手捕手経験者129名(6年生82名,5年生40名,4年生7名)とした.方法は検診時に記入・回収された問診票から,各選手の1週間の練習日数,1週間の総練習時間,現在過去の疼痛経験,疼痛部位,整形外科,接骨院受診の有無を集計した.また,全選手における1週間の練習日数,1週間の総練習時間の平均を算出し,新潟市と長岡市で比較検討した.統計は対応のないt検定を用いて,有意水準を5%以下とした.【説明と同意】 事前に文書と口頭で各チームの監督,保護者に対して検診の目的,内容について説明し,同意を得た.【結果】 問診票の各項目について,新潟市と長岡市で比較すると,1週間の練習日数の平均は新潟市3.41±1.3日,長岡市は3.54±1.2日であった.1週間の総練習時間の平均は,新潟市13.06±5.3時間,長岡市13.5±5.5時間で,練習日数,時間ともに新潟市と長岡市の間に有意な差は得られなかった.また,新潟市の有痛経験者は95名(51%)で,肩・肘関節の疼痛経験者は67名(36%)であった.長岡市の有痛経験者は101名(78.3%)で肩・肘関節の疼痛経験者は84名(65%)であった.有痛経験者における受診者は,新潟市では11名(12%)で,受診先は全て整形外科であった.長岡市の有痛者経験者における受診者は12名(12%)であったが,受診先は整形外科が6名,接骨院が7名であった(1名重複あり).【考察】 問診票の結果より,新潟市よりも長岡市において有痛経験者が多く,肩・肘関節の有痛経験者も長岡市の方が多かった.新潟市と長岡市の練習量には有意な差がみられなかったため,新潟市でのストレッチや成長期の投球傷害への啓発活動を長年継続してきた結果とも考えられる.しかし,チームの人数や年間の大会,練習試合数,指導者の指導方法の違いなど様々な原因も考えられるため,今後の更なる検討,調査が必要である.新潟市と長岡市の受診傾向では,新潟市では全員が整形外科の受診であり,長岡市では半数が整形外科を受診,半数が接骨院へ通っていた.これに関しても,新潟市では年間1回以上,指導者・保護者を対象に投球障害に関しての講習会を開催しているため,指導者・保護者に成長期の投球障害ではレントゲン診断が重要であるという理解が得られていた結果であると考えられる.一方,指導者や保護者の一部から,整形外科受診において,スポーツリハビリテーション等の対応が十分得られないという声もあり,理学療法士の更なるスポーツリハビリテーションでの活躍が求められている.今日までの野球障害ケア新潟ネットワークの検診事業,啓発活動は新潟市内のコメディカルスタッフ中心に行ってきており,ネットワークはまだ全県に広く拡大しているとは言えない.今後は様々な地域のコメディカルスタッフと連携し,共通の認識を持ち,検診事業や投球障害への啓発活動を拡大、充実させていくことが重要である.【理学療法学研究としての意義】 検診事業や啓発活動は新潟市内だけでなく全県に広がりをみせている.今回の報告では,新潟市と長岡市における投球障害と受診傾向などの地域差が確認された.この結果は,長岡市、さらに他地域の検診事業,啓発活動拡大,充実の一助となり得ると考える.
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top