理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 319
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骨・関節系理学療法
傾斜角度計を用いた骨盤傾斜角度の測定と姿勢性腰痛の関連性
*吉川 義之冨田 義之
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キーワード: 腰痛症, 骨盤傾斜角度, 姿勢
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抄録
【目的】腰痛症は生活習慣が大きく関与し、自宅での生活パターンや職業での姿勢などが腰痛の発生原因になっているとの意見が多い。McKenzieは日常生活上、坐位をとることが多いため、腰椎前彎が減少して腰痛が起こることが多いと述べている。逆にWilliamは腰椎の前彎の増強が腰痛の原因であると述べている。そこで今回、腰痛症患者に対し骨盤傾斜角度の測定と生活習慣を調査し、立位の骨盤傾斜角度の違いと日常生活の関連性、さらに腰椎前彎の状態と腰痛の関連性を調査した。
【方法】対象は当院に外来通院された他の運動器疾患のない腰痛患者(男性18名、女性16名)平均年齢45.5±10.7歳である。患者には研究の内容を説明し同意を得た。まず質問紙法により日常生活における姿勢を調査した。次に腰椎前彎の程度の比較を行うが、この基準がないため、骨盤傾斜角度の測定と腰椎前彎の程度を目測にて3段階に判別し、腰椎前彎増強群、前彎正常群、前彎減少群の3群に分け、骨盤傾斜角度と腰椎前彎の目測の比較を行った。骨盤傾斜角度は傾斜角度計(インクリノメーターに改良を加えたもの)を使用し、上前腸骨棘と上後腸骨棘を結ぶ線と水平面のなす角度を、立位にて左側より測定を行った。目測による3群間の骨盤傾斜角度差の検定は分散分析を用いて行った。3群間に差が認められれば、腰椎前彎の程度を骨盤傾斜角度で分類し、改めて骨盤傾斜角度増強群、正常群、減少群の3群に分け、生活習慣との関連性を調査した。
【結果】骨盤傾斜角度と腰椎前彎の程度の目測による3群間の比較では優位差が認められた(p<0.01)。上記の結果から腰椎前彎の程度を骨盤傾斜角度とし、骨盤傾斜10°以上を増強群、5°以上10°未満を正常群、5°未満を減少群と設定した。その結果、増強群5名(15%)正常群11名(32%)減少群18名(53%)であった。生活習慣との関連性については、増強群のうち日常生活で3時間以上の立位をとっている患者は80%、減少群で3時間以上の坐位を保持している患者は22%であった。
【考察】本研究では、腰痛症の発生因子である生活習慣と腰椎の形態学的異常について調査を行った。まず、生活習慣と腰痛症の関連性については、増強群の80%が3時間以上の立位を保持しているため、立位保持と腰椎前彎の増強は関連性があるように考えられる。しかし減少群では3時間以上の坐位を保持している患者は22%と低く、長時間の坐位保持と腰椎前彎の減少は関連性がないと考えられる。また、腰椎の形態学的異常と腰痛症は関連性があるとの報告があるが、本研究の骨盤傾斜角度正常群においても腰痛が出現しており、腰椎の形態学的異常が腰痛症の直接的な発生因子であるとは考えにくい結果となった。なお研究では腰椎前彎の測定の信頼性や症例数の問題があるため、今後の課題としていきたい。
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© 2007 日本理学療法士協会
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