理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 916
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骨・関節系理学療法
柔道選手における膝前十字靱帯損傷時の状況と動作
*越田 専太郎浦辺 幸夫出口 達也中野 裕子
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抄録
【目的】柔道選手において膝前十字靭帯(ACL)損傷が高い割合で発生していることが報告されている(西村ら 2003)。ACL損傷は競技力の低下を引き起こすのみならず、二次的な関節内損傷のリスクを増大させるため、予防の方策が必要である。柔道でのACL損傷の受傷機転のほとんどは接触型と予想され、その予防には損傷リスクとなる動作の解明が望まれる。しかしながら、このような損傷予防の視点から柔道の動作を分析した研究はほとんどみられない。そこで本研究では、柔道選手のACL損傷の受傷機転から、損傷リスクが高くなるのはどのような状況や動作であるかを探ることを目的とする。
【方法】対象は柔道によるACL損傷を経験した高校、大学、実業団の柔道部に所属する男女柔道選手23名25膝(男性14名、女性9名、平均年齢21.3±2.9歳、身長168.9±9.8cm、体重 87.6±18.9kg、柔道経験年数 11.2±3.8年)であった。全ての対象には本研究の目的、方法について説明を行い、参加への同意を得た。質問票によりACL損傷時の、1.相手との組み手関係(相四つか喧嘩四つか)、2.相手との攻守関係(技を仕掛けた側)、3.損傷膝(投げ技時の軸膝かどうか)について調査した。続いて問診により、ACL損傷時の動作についての情報を得た。さらに、対象には相手選手を想定したなかで受傷時の動作を実際に再現してもらった。損傷時の動作は、1.膝関節への直達外力による損傷、2.間接外力による損傷、3.その他に分類した。
【結果】直達外力による損傷に分類された例は全体の約5割(12例)を占め、投げ技を仕掛けた際に外側から軸膝を払われた、体落としを仕掛けた際に相手の体重が膝外側に加わった、斜め方向から大外刈を受けた、膝前方から外力を受けた場面がACL損傷時の動作として確認できた。また、間接外力によるACL損傷に分類された例は約3割(8例)みられ、後方への返し技を受けた、大外刈から上体を捻られた、小外掛のような技で投げられた際に体を捻った場面を確認した。ACL損傷時の状況として喧嘩四つの相手で損傷した例が全体の6割以上(16例)を占めた。
【考察】喧嘩四つでは、大外刈の動作などにより膝の外反の強制を受けやすい身体の位置関係となる。また喧嘩四つの相手からは、後方への返し技を受けやすいと考えられる。対象の下肢が畳に固定されたまま後方への投げ技を受けた際に、膝関節の外反、脛骨の外旋が過度に強制され、ACLを損傷したことは十分に予想できる。柔道によるACL損傷を予防する方策として、喧嘩四つの相手に対する投げ技の技術に注意を向ける必要があるかもしれない。


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© 2007 日本理学療法士協会
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