理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 917
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骨・関節系理学療法
足関節捻挫がラグビー選手の運動能力に及ぼす影響
筋力テスト・パフォーマンステスト・バランステストの比較
*西村 純市橋 則明長谷川 聡南角 学森 公彦宮坂 淳介中川 泰彰中村 孝志
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抄録

【はじめに】足関節捻挫はスポーツ活動で多く見られる外傷の1つであるが、不十分な治療のまま、テーピングや装具を着用することで競技復帰している例も多い。そのため、足関節捻挫を繰り返すこともあり、競技復帰には足関節を含めた下肢機能の十分な回復が不可欠である。しかし、例えば競技復帰のための基準など、評価方法は明確にされてはおらず、足関節捻挫後に競技復帰を果たした選手が機能回復しているかは明らかではない。本研究では、足関節捻挫がラグビー選手の運動能力に及ぼす影響を明らかにするため、足関節捻挫受傷の有無で下肢筋力・下肢のパフォーマンス・バランス能力を比較・検討した。
【対象と方法】対象は大学ラグビー部に所属する33名とした。1シーズンでの足関節捻挫の有無を調査し、捻挫受傷後、受傷日以降に練習もしくは試合を休む必要のあったものを捻挫群(3名、年齢:20.3±2.1歳、身長:177.9±8.0cm、体重:84.6±2.9kg)とし、受傷しなかったものを非捻挫群(30名、年齢:20.5±1.1歳、身長:173.3±4.7cm、体重:74.5±8.9kg)と分類した。シーズン終了時に運動能力テストを行った。なお、テスト時には足関節捻挫を受傷した全選手が競技復帰を果たしていた。種目は、筋力テスト、パフォーマンステストおよびバランステストとした。筋力テストはMYORET(川崎重工業株式会社製、RZ-450)を用い、60・180・300deg/secでの膝関節屈伸筋力およびストレングスエルゴ(三菱電機株式会社製)を用い、40・60・100deg/secでのペダリング力を測定した。パフォーマンステストは片脚でのSide Hop、6m Hop、垂直跳び、幅跳び、3段跳びとした。Side Hopは30cm幅を片脚にて、側方に10回跳び越える時間、6m Hopは片脚跳びにて前方へ6mを進む時間、3段跳びは助走せずに片脚にて3回連続で前方に跳んだ距離を測定した。バランステストは重心動揺計(アニマ社製、G-5500)を用い、開眼および閉眼片脚立位での総軌跡長を測定した。
【結果と考察】筋力テストは、膝関節屈伸筋力およびペダリング力ともに、全速度で大きな差は認められなかった。パフォーマンステストは、Side Hopでは捻挫群は3.95±0.23秒、非捻挫群は3.39±0.18秒で、捻挫群が16.6%高い値を示し、側方への敏捷性の低下が認められた。一方、6m Hop、垂直跳び、幅跳び、3段跳びでは捻挫群は非捻挫群に比べて大きな差はみられなかった。バランステストは、片脚立位での捻挫群の総軌跡長は非捻挫群より開眼で22.3%(捻挫群:143.7±42.3cm、非捻挫群: 111.7±24.5cm)、閉眼では17.9%(捻挫群:277.5±76.1cm、非捻挫群:227.9±74.8cm)それぞれ高い値を示し、片脚立位でのバランス能力の低下を認めた。足関節捻挫を受傷後、競技復帰を果たした選手の中には、筋力、前方への敏捷性、ジャンプ能力に大きな差がなくても、片脚立位でのバランス能力や側方の敏捷性が低下していることが示唆された。

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© 2007 日本理学療法士協会
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