理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 923
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骨・関節系理学療法
高校サッカー競技選手3例に発生したJones骨折後の早期競技復帰
*山下 裕之森安 真佐藤 和敬柚木 脩
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抄録

【目的】第5中足骨骨幹近位部のJones骨折への対応は選手の状況によって、放置、ギプス固定等の保存的治療、手術的治療が選択され得る。また、本骨折には、急性発症型と疲労骨折型があり、これも治療選択に影響を与える。よってスポーツ整形外科医はその治療において、決められた治療法のみを行うことは困難である。また、理学療法士やスポーツ現場のアスレティックトレーナーにとっても、選択する治療により、症例個々に対応していく必要がある。
急性発症型、かつノンコンプライアンスの状況下にある選手で、とりわけ、3年生レギュラーで試合期に発生した骨折の場合、手術による早期競技復帰を求め医療機関を受診する。この場合、当院ではサファイアくさびピンを材料として経皮的固定を行い、さらに足底板(アーチサポート+外側ウェッジ)を装着させた上で、ノンコンプライアンスの状況で競技復帰を行っている。このように対象を絞った治療経験は、今後種々の治療成績を細分化し、比較検討していくためのデータとなり得ると考え報告する。
【対象】5月、10月の試合期に本症を発生した高校サッカー競技選手3例。
治療プログラムとして、Jones骨折に対して上記手術法を施行された後、ノンコンプライアンスの状況下にて基本的動作(ランニング、ストップ、ジャンプ等)およびサッカー動作(基礎、実践練習)を段階的に実施した。同時に補助トレーニングとして足趾・足関節周囲筋トレーニング、バランストレーニングを指導した。
【方法】時系列でX線学的変化をとらえ、本人およびアスレティックトレーナーに対し、その時点での復帰状況の聴取、および自覚的運動能力の評価を行った。
【結果】3例とも術後3週間以内に自覚的運動能力8割で現場復帰し、それぞれ術後3~4週でレギュラーとして試合出場した。X線学的変化では経時的に新生骨が増大し、12週ではほぼ安全圏と思われる骨癒合が認められ自覚的運動能力は10割であった。
【考察およびまとめ】急性発症型Jones骨折に限定すれば、ノンコンプライアンスの状況下でも受傷後早期に骨折部を固定し、疼痛の程度に応じて段階的に運動ストレスをかけることが、良好な骨癒合と早期競技復帰に至った理由であると考えた。今後この治療プログラムの有用性をさらに検討するために、Jリーグ、大学サッカーなどにおけるデータが公刊されれば幸いである。

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© 2007 日本理学療法士協会
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