理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 924
会議情報

骨・関節系理学療法
捕手の障害特性について
*児玉 雄二青木 啓成山岸 茂則長崎 寿夫小池 聰奥田 真央
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
野球のスポーツ障害といえば投手の投球障害、というイメージが強いが、長野県理学療法士会(以下当士会)が行っている、県下の高校野球大会のメディカルサポート事業において、利用選手をポジション別にみると、捕手の利用が投手に次いで多く見られている。今回は捕手の障害像に着目し、調査したので報告する。
【方法】
対象は当士会が県高校野球連盟から依頼を受けて行っている、高校野球メディカルチェック事業(以下、メディカルチェック)を受けた捕手14名(1名は野手兼任、全員右投げ、右打ち12名、左打ち2名、1年生6名、2年生8名)である。メディカルチェックの項目は、問診(学年・打席側・投球側・障害歴、野球歴など)、関節可動域(以下ROM)、柔軟性、アライメント、筋力、肩甲骨-脊柱間距離、フォーム異常、バランス能力、そして医師による診察である。今回は障害歴・現病歴のうち、肩関節痛者は3名・肘関節痛者は2名と少なく傾向分析は困難と判断し、腰痛者6名と非腰痛者8名、計14名をとりあげその身体機能・障害特性について調査を行った。
【結果】
腰痛者と非腰痛者で有意差が認められた項目はROMのみであった(統計学的有意水準5%未満)。腰痛者は、投球側・非投球側を問わず、股関節では内転可動域が大きく、体幹では左右の回旋可動域が減少していた。肩関節では3rd内旋・外旋可動域と2nd外旋可動域が非腰痛者より大きいことが確認された。
【考察】
捕手の腰痛は県下の大会サポート事業で見られる障害のうち比較的多いものであり、今回のメディカルチェックでもその事は明らかになった。捕手はその動作より、立ち座りを繰り返し行う点、立ち上がりながらすばやく送球しなければいけない点、重いプロテクターを装着している点が特徴である。
この特徴から想像すると、腰痛者の体幹回旋可動域の減少は、捕手の動作遂行上モビリティーよりもスタビリティーを優先するタイプに多く、かつ下肢の動作との連動が低下しているタイプと推察される。肩関節回旋可動域の拡大は、この体幹・下肢の動きの反動として、現れた結果と推察されるが、この動きには肩関節、肘関節を中心に上肢にかかるリスクが増大する事も推察される。いずれのパターンにせよ動作解析や理学所見等を検診事業や大会現場で繰り返しながらその障害特性をさらに明らかにし、必要なケアやトレーニング方法の検討を続け、障害の早期発見と予防に寄与したい。

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top