理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 960
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骨・関節系理学療法
Sri Lanka国において義肢装着後の傷の発生状況を調査して
*飛永 浩一朗井手 睦
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キーワード: スリランカ, 下肢切断, 義足
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抄録

【はじめに】 JICA青年海外協力隊(以下JOCV)一般短期派遣にてスリランカ国にて理学療法士として6ヶ月間の活動を行った(派遣期間:2006年3月21日から9月20日、派遣施設:Colombo Friend in Need Society)。この施設はスリランカ人が運営するNGOであり、主に肢切断患者に対し義肢を無料で提供しているが、下肢切断患者が義足装着により傷を生じるケースを経験した。切断端の傷の発生は、義足の不適合のみでなく、全身のコンディションの悪化等につながる。そこで義足装着による傷の発生状況の調査を行い、スリランカ特有の問題点、課題について考察した。
【対象】 同施設に2006年6・7月の2ヶ月間に入所した下肢切断患者39名(男性31名・女性8名、A/K13名・B/K26名、平均年齢50.7±15.8歳、平均入所期間12.7±8.6日)。
【方法】 義足装着毎に切断端をチェックし義足装着による傷の有無を確認した。また年齢・入所期間・切断原因については聞き取り調査を行った。
【結果】 切断原因は交通事故(列車事故を含む)14名、糖尿病の合併症によるもの14名、その他11名であった。初回義足製作患者22名(A/K9名・B/K13名)、2回目以降義足製作患者17名(A/K4名・B/K13名)であった。義足装着後傷が発生した患者は7名(A/K2名、B/K5名)であり、全て初回義足製作患者であった。傷は切断端先に生じたもの6名、荷重部分に生じたもの1名であった。
【考察】 Colombo Friend in Need Societyにおいて義足装着後傷が発生する原因について以下のように考察した。施設内の問題点として、1)義肢製作技術者、2)理学療法部門、3)施設全体の問題点が考えられた。義肢製作技術者の問題点として、義足製作時の採型法の知識・技術不足、義足装着後チェック能力・問題認識の不足、問題発生時の対処法の未確立、助言・指導等の受け入れ姿勢が低いことを挙げた。理学療法部門の問題点は、知識・経験不足のため、義肢製作部門に対し発言力が欠けることと判断した。施設全体の問題点として、施設内患者Flowchartの未確立を挙げた。施設外の問題点として切断術を行った病院の問題点、疾病に対する認識の不足、経済・文化背景による問題点を挙げた。これらの問題点に対し施設内スタッフとJOCVが共同作業を通し、現状の把握、基礎医学・採型法・評価法の学習、施設患者Flowchartの作成を行う必要があると考える。またスリランカの国情を考慮し、実地介入を行うことは重要な支援活動と考える。

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© 2007 日本理学療法士協会
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