理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 981
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骨・関節系理学療法
腰椎変性疾患により下垂足を呈した症例に対する術後機能と回復
*中井 英人荒本 久美子澄川 智子小出 祐川上 紀明宮坂 和良辻 太一小原 徹哉今釜 史郎野原 亜也斗安藤 圭
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抄録
【はじめに】腰椎変性疾患により下垂足を来し、手術に至った症例の割合は一般に2.4〜5.8%である.当院では3.2%であり、術後通常プログラムに加えて積極的なリハビリを実施している.そこで今回下垂足を来した腰椎変性疾患症例の治療成績、患者満足度を検討し若干の知見を得たのでリハビリプログラムと併せて報告する.
【対象】2002年5月〜2006年3月までに当院にて腰椎変性疾患と診断され手術を施行した762例中、術前に下垂足で術後6ヶ月検診が受診可能であった17例を対象とした.ただし今回の下垂足とはMMTにて前脛骨筋(以下TA)が3未満を呈したものとした.その内訳は腰椎椎間板ヘルニア(以下LDH)12例、腰部脊柱管狭窄症(以下LSCS)5例で、男性8名、女性9名、手術時平均年齢は50歳(24〜81歳)、下垂足が出現してから手術までの期間は3日〜1年3ヶ月であった.手術方法はLDHにlove法を、LSCSに開窓術を施行した.
【方法】術後は通常プログラムに加えて、足部背屈の誘発、下腿前面に対する徒手的療法、積極的な足部背屈筋増強運動、足部可動性を保つ為のストレッチを積極的に実施した.今回出現からの期間と術前、退院時、術後6ヶ月時にMMTにてTA、長母趾伸筋(以下EHL)、中殿筋(以下GM)、しびれの有無、柔軟性として膝関節伸展位足関節背屈角度(以下Gas角)、10m最大歩行所要時間およびSF-36を求め、術後6ヶ月における下垂足有無の2群に分け比較検討した.
【結果】下垂足は術前17例中退院時では9例が、6ヶ月検診時点で改善が12例(以下改善群)、下垂足が5例(以下下垂足群)であった.またしびれが消失した例では全例下垂足が改善していた.EHL3未満は術前13例、退院時では11例に、6ヶ月検診では7例であった.群間比較において、下垂足出現から手術までの期間において下垂足群は改善群より明らかに長期であったが経過6ヶ月で改善した例もあった.Gas角では改善群は徐々に角度は拡大したのに対し、下垂足群は退院時には変化はないものの術後6ヶ月では低下していた.筋力においてEHLは術前、術後ともに改善群が下垂足群より明らかに強かった.中殿筋は術前では差がないが術後6ヶ月には改善群が下垂足群より明らかに強かった.歩行速度において術前では差はみられないものの、術後6ヶ月では明らかに改善群は下垂足群より早かった.SF-36では、術前は差がないものの術後6ヶ月では下垂足群が改善群より日常役割機能身体、精神の項目で劣っていた.
【考察】EHLと下垂足出現からの期間には下垂足と強く関係があり、諸家の報告と同様な結果となった.そして改善群ではGas角が上昇しており、改善には足部の柔軟性が重要なカギを握ると思われた.またGMはTAと神経支配レベルが同一でありTAの回復をみる上で参考になると思われた.また下垂足の改善には日常生活の身体的な条件のみではなく精神的にも影響を与えていた.
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© 2007 日本理学療法士協会
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