理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 982
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骨・関節系理学療法
腰椎椎間板ヘルニアの神経根症状を呈した症例
仙腸関節不安定性に対するアプローチ
*桂 大輔増井 健二
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抄録
【はじめに】臨床場面にて椎間板ヘルニア由来の神経根症状と骨盤帯の不安定性由来の症状の混在する症例を多く経験する。これらの症状を分ける事は困難であるが所見を分けてアプローチすることは重要である。今回、仙腸関節・体幹の不安定性の所見に対してアプローチすることで早期に神経根症状が軽減した症例を経験したので、考察を加え報告する。
【症例紹介】39歳男性、事務職員。数ヶ月前より腰部痛と下肢への放散痛が出現し、2006年4月24日 歩行困難となる。4月26日、当院受診しMRIにて左L4/5椎間板ヘルニアと診断され入院となる。
【評価および理学療法経過】4月28日・5月2日、2度の硬膜外ブロック注射施行し歩行可能となるが、腰部・下肢症状残存。5月8日より理学療法開始。初期評価における立位姿勢は胸椎後弯・骨盤後傾で重心は右偏位、歩行は左股関節外旋位・遊脚期は下垂足を呈し間欠性跛行(6分間120mでVAS2)を認めた。触察において両側脊柱起立筋、左股関節外旋筋に過緊張と圧痛を認めた。ラセーグ徴候陽性、MMTは左前脛骨筋4 長母趾伸筋3、左下腿外側に異常感覚。仙腸関節ストレステストは陽性。ActiveSLR(以下ASLR)左30°(P)右60°であったが骨盤誘導にて腹横筋の機能を補助したASLRでは、左側は疼痛なく挙上可能。左片脚立位時(以下march test)に左PSISの動揺が触知され、神経根症状と骨盤帯の不安定性由来の症状が混在していた。
治療では、両脊柱起立筋群と左股関節外旋筋に対しリラクゼーションを施行後、core stability を高める目的で坐位での治療的誘導を行なった。さらに、治療効果の継続を図るために腹横筋と骨盤底筋群を意識して収縮させる自主的トレーニングを指導した。
5月16日、立位姿勢は胸椎後弯・重心の右側偏位は軽減、歩行は左股関節外旋位・遊脚期の下垂足ならびに間欠性跛行(8分間320mでVAS2)が軽減した。両側脊柱起立筋、左外旋筋に過緊張・圧痛は軽減。MMTは前脛骨筋5、長母趾伸筋4。ラセーグ徴候陰性、異常感覚は軽減。仙腸関節ストレステストは陰性。ASLRの左右差も改善し、march testでの不安定性も陰性。仙腸関節不安定性由来の症状は軽減し退院となった。以後週1回外来通院となり、5月20日職場復帰となった。
【考察】
本症例は主要問題として神経根症状を有していた。仙腸関節やcore stability を高める治療的誘導により神経根症状が改善したことから、仙腸関節の不安定性がcore stabilityを崩壊させ、椎間板の変性や神経根症状を助長していたと考えられる。
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© 2007 日本理学療法士協会
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