理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1318
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骨・関節系理学療法
頚部の固定による肩甲骨周囲の疼痛因子の検討
*高橋 裕司千葉 慎一川口 聡及川 雄司
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キーワード: 頚部固定, 疼痛, 肩甲骨
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抄録
【目的】頚椎の手術後や外傷後には多くの場合に装具での固定が必要とされ、固定中には頚部から肩甲骨にかけての疼痛を訴える症例は多い。これに対し肩甲骨の可動性や周囲筋力の改善を行うと疼痛が軽減することを臨床上経験することがある。本研究の目的は頚部固定の前後で肩甲骨の位置、周囲筋の筋硬度にどのような変化が起きているかを検討することである。
【対象・方法】対象は実験の主旨を説明し同意を得た健常成人6名(23~36歳 平均27.5歳)とした。方法は頚部をフィラデルフィアカラー(アドフィットUDカラー)にて30分間固定し、その前後で疼痛、肩甲骨の高さ、及び筋硬度を測定した。疼痛はVisual analog scale (VAS)を用いて計測した。肩甲骨の高さは肩甲棘内側縁から脊柱に垂線を引き、その交点とTh3の距離とし、両側を測定した。筋硬度の計測は井元製作所製、筋弾性計PEK-1を用い測定した。測定部位は左右の僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋とし、5回測定し最高値と最低値を除した値の平均値を各部位の硬度とした。統計学的処理は対応のあるt検定を用い固定の前後について比較検討を行った。
【結果】VASは6名中5名で固定後に高値を示し、頚部から肩にかけての張り、肩こりの訴えがあった。肩甲骨の高さの変化量は、右-1.27±1.08、左-1.40±0.97であった。両側とも固定後にて低置を示す傾向があり、肩甲骨の下制が認められた。筋硬度においては有意な変化は認めなかった。
【考察】臨床上、頚部固定により肩甲骨周囲に疼痛および、筋の硬化が認められることを経験する。今回の結果では固定時間は短時間であったが、ほぼ全例に疼痛の増強と肩甲骨の下制が認められた。疼痛と肩甲骨の位置との間には何らかの関連性があることが示唆された。しかし、筋硬度に関しては上昇する者、低下する者どちらも認められ、今回の結果からは筋の硬化が疼痛の明らかな原因であると言及するには至らなかった。これらに関しては固定の仕方や固定中の行動などの因子により変動する可能性があり、今後はそれらを考慮し、さらに検討を加え原因の追究を行っていこうと考える。
【まとめ】頚椎の固定前後において検討を行い、ほぼ全例に疼痛の増強と肩甲骨の下制が認められ、関連性が示唆されたが、筋の硬化が明らかな疼痛因子であることを言及するには至らなかった。
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© 2007 日本理学療法士協会
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