理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1371
会議情報

骨・関節系理学療法
交代浴と徒手刺激で短期に症状改善を認めた一側性上肢のCRPS type?氓フ1症例
*西山 保弘塩川 左斗志吉河 康二
著者情報
キーワード: CRPS, 交代浴, 徒手刺激
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
水関(1994)らは 複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者23例に対して交代浴が有効であると報告し、その使用を推奨している。今回、交代浴と徒手療法を施行し、比較的短期間で実用手まで回復したCRPS患者1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
55歳男性。職業は医師。平成17年12月末よりゴルフ後、左手首橈側痛出現。平成18年2月近医整形外科医院で変形性関節症疑にて、ロキソプロフェン内服、ステロイド局注を行うが改善なし。平成18年5月左手背部に著名な浮腫と疼痛出現、プラスチックギプスにて加療し、やや改善を認めるが、平成18年6月、熱感、手指軽度屈曲位の関節拘縮、単純X線像上関節周囲に骨萎縮像を認め、CRPS typeIと診断される。初診時現症として左手指軽度屈曲拘縮(ゴルフボールが握れない程度)、握力右29kg、左0kg、安静時痛visual analogue scale(VAS)10/10(MCP関節部に針を刺すような痛み)、爪の変形変色、体毛多毛化、アロディニア様の症状を認める。利き手は右。薬物はロルノキシカム4錠、プルルビプロフェン貼付剤。6月28日より理学療法(交代浴、徒手療法)開始、交代浴の方法は温水40~41°Cと冷水15°Cで温水4分、冷水1分×4 最後は温水で終わる)。徒手療法は深部軟部組織に加圧と伸張の機械刺激を加える方法を、最初は健側上肢のみ、回復に伴い両側上肢、最後は体幹、下肢へと治療範囲を広げる。症状の改善に伴い、関節可動域訓練、BMR社製NeuroTechによる低周波電気刺激、コールドレーザー刺激を患部に施行した。治療期間は平成18年6月28日~10月6日まで、週2回、9月以降は改善に伴い週1回の頻度で行った。交代浴は、自宅でもできる限り行った。経過は、平成18年7月19日に腫脹の軽減、疼痛の改善を既に認めた。平成18年8月11日には、軽度改善され、左握力13kg、安静時痛VAS 3/10と仕事でも物がつかめるようになった。平成18年9月15日、単純X線像では骨萎縮の改善はみられなかった。平成18年10月17日、生活上は業務に支障はなく、テニスなどスポーツが可能な段階まで回復した。11月7日現在、症状の悪化は認めていない。尚、症例にはインフォームドコンセントを行った。
【考察】
水関は、交代浴は理学療法開始前段階で他の治療効果を有郊にする性質をもつと述べている。水関のCRPSに対する交代浴のみによる治療報告の平均治療期間は1年8ヶ月(n=23)を要しているが、本例は3ヶ月半と短い期間で症状の改善を認めた。
【まとめ】
交代浴と徒手による機械的刺激を併用することで、比較的短期間で症状の改善を認めた本例の経験は、CRPSの症状改善におけるこれら2つの理学療法の有用性を示唆するものと考えられた。

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top