理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1370
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骨・関節系理学療法
骨粗鬆症検診受診者における転倒不安感と骨密度・運動機能との関連
*伊藤 誠子安藤 卓清水 啓史黒川 正夫西村 敦
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抄録

【目的】転倒予防に関して様々な研究が行われる中、転倒恐怖感・不安感と身体機能との関係が注目されつつある。一般的に転倒不安感を有する者は不安感による活動制限が引き金となり筋力やバランス機能などの身体機能の低下が起こると報告されている。そこで骨粗鬆症検診受診者の転倒不安感と身体機能、骨密度の関連性について検討し、転倒・骨折予防の一助とすることを目的として本研究を行った。
【方法】対象は当院にて2006年6月から9月の間に骨粗鬆症検診を受診した女性54名(69.7±19歳)である。方法は自記式調査票により転倒に対する不安感の有無、過去1年間以内の転倒経験、日常生活関連動作および運動歴の回答を得た。また受診者の内、同意が得られた38名(69.6±19歳)に対し体力測定を実施した。体力測定はバイタルチェック、身体測定(身長・体重・下肢長)、柔軟性(椅子座位体前屈)、筋力(握力・腹筋・背筋・膝Cybex測定・椅子からの立ち上がり・踏み台昇降)、バランス機能(開眼・閉眼片脚起立)、歩行能力(10m歩行速度・最大1歩幅)を実施した。検診で測定した骨塩量YAM%(YAM:若年成人平均値)と体力測定結果を転倒不安感あり群・なし群の2群間で比較検討した。統計処理はマン・ホイットニ検定を用い危険率5%未満とした。
【結果】アンケート結果では転倒不安感あり群は26名(48%)、転倒不安感なし群は28名(52%)であった。過去1年以内に転倒を経験した者は12名(22%)であり、転倒あり・不安感あり群7名(13%)、転倒あり・不安感なし群5名(9%)であった。日常生活関連動作は買い物、調理、洗濯、外出等いずれの項目も85%以上が自立レベルであった。運動歴は61%の者に認め、不安感あり群で54%、不安感なし群では68%の者が何らかの形で日常的に運動を行っていた。骨塩量の比較では転倒不安感あり群の大腿骨頚部の骨塩量が有意に低下していた。体力測定の結果では転倒不安感あり群の膝伸展筋力、踏み台昇降が有意に低下していた。その他の項目は不安感あり群の方が低下していたが統計学的有意差は認めなかった。
【考察】転倒不安感あり群において大腿骨頚部の骨塩量と下肢筋力項目で有意に低下していた。これは個身体機能低下の自覚が転倒不安感に反映されていることが考えられる。また今回の研究ではアンケートの結果から検診受診者の多くは日常生活が自立していたが、不安感あり群において日常的に運動を励行している者が少ない傾向がみられ、そのことは大きな筋力、持久力、バランス能力などが求められる運動や活動の制限に繋がっていると考えられる。
【まとめ】転倒不安感がある者において大腿骨頚部の骨量減少と下肢筋力低下を認めた。今後、地域での転倒予防対策とそれを通して転倒不安感軽減を図る必要性があると考えられる。

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© 2007 日本理学療法士協会
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