理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 19
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内部障害系理学療法
心臓外科手術後の離床基準について
離床基準のアンケート調査結果から
*熊丸 めぐみ高橋 哲也田屋 雅信宮澤 寛子設楽 達則西川 淳一金子 達夫櫻井 繁樹安達 仁大島 茂谷口 興一
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キーワード: 心臓外科手術後, 離床, 基準
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抄録

【目的】手術の低侵襲化や術後管理の進歩により、心臓外科手術後は早期離床が定着してきた。手術後の離床基準は各施設で異なると思われるが、実際にどの程度、どの項目で基準に違いがあるかなどは不明である。そこで今回、心臓外科手術後の離床基準について全国調査を行った。
【方法】2002年度から2005年度の内部障害系理学療法専門領域研究会循環器基礎講習会「心臓外科手術後の理学療法」に参加した施設を対象に、心臓外科手術後患者の理学療法介入状況や離床基準、理学療法進行(中止)基準に関する調査を郵送アンケート方式にて行った。
【結果】アンケートを送付した91施設のうち57施設(62.6%)から回答を得た。そのうち、心臓外科手術後患者の離床に理学療法士が携わっていると答えた施設は48施設(84.2%)、携わっていないと答えた施設は9施設(15.8%)であった。心臓外科手術後患者の離床に理学療法士が携わっていると答えた48施設のうち、44施設(91.7%)はICUから、4施設(8.3%)は一般病棟にて介入していると答えた。また、離床基準・理学療法進行(中止)基準をもって介入していると答えた施設は48施設中32施設(66.7%)、基準なしと答えた施設は16施設(33.3%)であった。各施設の離床基準を11項目(意識状態、バイタルサイン、カテコラミン製剤、ドレナージ、スワンガンツカテーテル、酸素化、呼吸器合併症、心電図、水分バランス、血液データ、そのほか)に分類したところ、バイタルサイン(90.9%)、心電図(81.8%)の順に基準化されている割合が多く、血液データ(31.8%)、水分バランス(36.4%)については基準化されている割合が少なかった。個別の項目では、心不全や低心拍出量症候群の兆候がある場合はほとんどの施設で離床は中止されていたが、カテコラミン製剤(ノルアドレナリンを含む)が投与されていてもForresterの病型分類I群が保障されていれば離床に制限を設けていない施設がある一方で、カテコラミン製剤の投与終了が離床基準になっている施設もあった。また、スワンガンツカテーテルが挿入されていいても立位まですすめている施設がある一方で、挿入中は離床しない施設もあった。手術後新たに不整脈が発生した場合はその当日の理学療法を中止する施設がほとんどで、その後の離床は不整脈がコントロールされた後に行われていた。また、ドレンが挿入されていても歩行を可能としている施設が多かった。
【考察】離床関連項目は各施設でほぼ同様のものであったが、各項目の基準設定範囲はさまざまであり、施設ごとの特徴を認めた。心臓外科手術後の離床基準は、心臓外科医の考え方や、ICU看護師の管理体制、理学療法士のかかわり方などによって異なると思われるが、今回の調査結果は各施設での離床基準の見直しの一助になることが期待できると考える。

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© 2007 日本理学療法士協会
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